第3話 自警団Ⅰ

今日は早く起きる事ができたが、働き者の時雨さんと瑞希はすでに起きていてそれぞれの布団にはもういなかった。

「時雨さんおはよう」

「あら旦那様おはようございます♪」

「瑞希は?」

「瑞希は今水を汲みに行ってます。」

 猫耳着物娘の時雨さんがぱたぱた朝の店支度をしている。瑞希は昨日あんなことがあったのだが幸いにもトラウマなどにならず今までとおりの様子である。

「お水ー! 時雨お姉ちゃんお水だよー!」

 水が入った瓶を持って瑞希が現れた。俺は昨日の事を思い出す。

「あのさ。時雨、自警団の場所知ってるかい?」

「旦那様。危ないことは、め! ですよ!」

「いや、ちょっと聞きたいことがあって。」

「……旦那様がどうしてもって言うなら仕方ないですが。今度、危ないことになるようでしたら、門限を作りますからね! そうして旦那様をお家に縛るのです!」

「……何を言ってるんだ時雨さん。自警団の場所教えてください……」

「ふう、地図を書きますから待っていてくださいね。」

 時雨さんは紙を棚から取り出して簡単な地図を書いてくれた。

 時雨さんの筆を持つ手と振り袖を押さえる手がなんとなく美しく感じて

 んんっ! と思い直し地図の説明を受ける。


「なるほど。こうやって行くのか……ありがとう時雨さん。帰りも大丈夫そうだ。」

「ご主人様、瑞希お留守番……?」

「瑞希は時雨さんとお店のことがあるだろ? 俺は自警団の人に聞きたいことがあるから行ってみるよ。瑞希はお留守番。」

「にゃー……わかったー」


瑞希はもにょもにょと何かを言いながらお店の準備を始めた。

「地図ありがとう。時雨さん、瑞希行ってくる。」

「はいにゃ!」


この世界の自警団がどんな組織なのかわからないが、あのケイという人物何かを知っている。スキルだとか前の世界だとか聞きたいことはたくさんある。

「――俺はどうしてこの世界に。」

当たり前の問いが口をついて出る。特に時雨さんから仰せつかった仕事もないから、今日はぎりぎりまで自警団のところに居よう。

そうして俺はひなたぼっこを出て自警団のある建物に向かうのだった。

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-猫々戯画- 異世界ファンタジー活劇譚 @毎週日曜日更新 @YukiShohei

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