全編を通し、ぞくぞくと緊張感を持って読まされる作品でした。
コンピュータの世界というのは、科学の最先端のようでいて、同時に『怪談』の巣食う場所としても定番となりつつあります。
アプリやAI、そしてインターネット。それらはあまりにも膨大な数が世の中に存在し、一人の人間の頭の中では到底把握しきれない広がりを持ったものでもあります。
そんな『把握不可能』な広がりを持つからこそ、『正体の不明の何か』が紛れ込むのでないか、と想像力をかきたてられます。
この作品の中でも、『あるアプリ』に関する不穏な噂が出てくるようになります。
『日常の中に冒険を』というコンセプトのもと、GOOGLEマップのような形式で、ユーザーを特定の場所に導いてくれるというアプリ。しかし、そのアプリが導く場所と言えば、『謎の落書きがある場所』や、『ミステリーサークルのある場所』、『幽霊の出る場所』など、不気味なところになってしまうという。
噂を聞き、興味本位でアプリをダウンロードした主人公。そしてアプリを起動したところ、噂の通りに奇妙な廃墟へと誘導されてしまう。そしてそこで見つかった謎の文字、『つまはぎ』。
本作は冒頭から最後まで、『現代ならではの不安や恐怖』が丹念に描かれていて、ぐいぐいと先へと読み進められる魅力に満ちていました。アプリにまつわる怪談もぞわぞわする不穏さに満ち、それを使ってみる主人公の行動を見て行くのも、『コワい物見たさ』を刺激し続けてくれます。
現代性の強いホラー短編の傑作として、是非ともオススメしたい一作です。