Ｃｈｉｎａ－ｉｋｅｎ

春巻き巻き巻き

Ｃｈｉｎａ－ｉｋｅｎ

チャイナ軒　内見一回目：

「へえ、一階はコミュニティ広場になっているんですねえ」

「そだヨ。皆、マージャンで生計立てテル」

「ちょ！　仮にも大家さんが賭けマージャンを黙認ですか？」

「賭けてないヨ。皆は、動画を収入源にしてるアル」

「「動画？」」思わず声がユニゾン。

そういえば、採掘場みたいなヘルメットを被っていらっしゃるような。

「皆はＶｔｕｂｅｒの端くれアルヨ。スマートフォン出しナ」

内見者（女性）がスマホを取り出す。

慣れた手付きで動画サイトを操作する大家さん。

「ちなみに、ここから時計回りに

『チン』『ジャオ』『ロー』『スー』というＨＡＮＤＬＥＮＡＭＥネ」

『チン』さんがさも迷惑そうに

「今、いい勝負なんだから黙っててくんねえか？」

『ジャオ』さんが満面の笑みで

「俺たちの仕事はあくまでも動画編集ずらあ」

『ロー』さんも同意して

「素材を活かすも殺すも実況一つなのでは？……立直！」

『スー』さんは血眼ギンギンで

「手前、抜け駆けは許さん！……追っ掛け立直じゃ！」

狭い卓の中でＲＥＡＣＨの声が呼応する。

内見者（男女）は、彼等は決して触法せずに

マージャンという遊戯で生計を立てていると理解した。

「（卓を離れて）これがチャイナ軒の一階の紹介ネ。

二階の部屋は騒音がやかましいから、かなりお安く提供するヨ」

男（どう思う？　この物件……）

女（どうって。私は気に入ったよ？）

小声で何やら作戦会議。

「おジョーちゃんがＶｔｕｂｅｒになるのもいいケド

　夜食の春巻き作りを手伝ってくれると助かるヨ」

チャイナ軒　内見二回目：

今日は対局がなく、プロジェクターで映像を映して

各々の動画の確認をし合っている様子だ。

内見男女はほぼここに決める心づもりになっている。

決して強くはないが、男性はマージャンの心得も。

騒がしいくらいが丁度良い。

騒音付き格安物件は、新入居者候補を迎えながら

春巻きを巻き巻きして

少し早い夕飯を皆で仲良く囲むのであった。