コウタ、家を買う
晴れ。
自分の家
コウタは緊張していた。
深呼吸。
勢いよく不動産屋に向かった。
小さな森の小さなウサギの不動産屋。
コウタは
ずっと夢見ていたのだ。
『自分の家を自分で探す』
コウタは少しだけ不安だった。
ハムスターの体は
とても小さいのだ。
自分サイズの家なんて、あるんだろうか。
「 安心して下さい。
ちゃんと ありますよ 」
ウサギの不動産屋では
担当ウサギが 笑顔で答えてくれた。
コウタは物件の希望を伝えた。
●森の近くで草木や花・動物と話しが出来る。
●一戸建て。
広さは気にしない。
ベッド、机と本棚、
キッチンとトイレとお風呂が入るくらい
集合住宅では
隣の音が気になって落ち着かない。
「 ご希望の物件が1件ございます 」
笑顔の担当ウサギは
コウタの前に写真を差し出した。
小さくて可愛らしい家の写真。
写真を見るコウタの目は、キラキラと輝いた。
「 わあ スゴイ!
これがボクの家になるの?!
一体どこにあるの? 」
「こちらは、森の中にある物件です。
森で遊んだり、
木や草や動物と話したりするのに
最適の物件です 」
なんてステキなんだろう!
コウタは
この家で暮らす日々を想像してみた。
ワクワクが止まらない。
「 家具や設備は、魔法で作られたものです 」
ベッドがふわふわの雲で出来ていて、
ハムスターには柔らか過ぎる、とか。
キッチン・トイレは水が出ない、とか。
電気が点かない、とか。
とか。
担当ウサギが家の設備について
説明していたが
コウタは
まるで聞いていなかった。
森の奥に建つ一軒家。
木漏れ
キラキラ輝いて見える。
庭では
色とりどりの花が咲いて。
何よりも
コウタの心を捉えたのは
この家が
ハムスターに
ピッタリのサイズだった事。
「 この家は いくらですか? 」
「 とても安いんですよ。
なんと!
ヒマワリの種100粒です! 」
魔法で出来た家なのだ。
お金で買うものではないのだろう。
ヒマワリの種100粒なら
コウタにも用意できる。
あとは買ってから
自分の好きな家に
仕上げていけばいい。
「 買います! 」
「 それはよかった!
さっそく契約しましょう! 」
担当ウサギは笑顔で
契約書を取り出した。
「 では こちらにサインを。
あと 契約の証として
殻付き甘栗を1個・・・ 」
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「コウタ寝てる?」
「よく寝てるよ」
ハムスターのコウタは
真新しくなった寝床で
爆睡していた。
枕元には
ヒマワリの種。
食べながら寝落ちた
殻付き甘栗を抱きしめている。
殻にヨダレが垂れているのは
ご愛敬。
コウタ、家を買う 晴れ。 @Nirvana852
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