エピローグ 0-6
『じいじ。どーしたと?』
お爺さんは、ちいさな女の子を背負っていた。
おでかけの目的地。歴史の博物館の前。他ならぬ世界に名を刻んだ、死した偉人の殿堂。
お爺さんは立ち止まって、女の子にきいたのだ。
『……アイリスも、この中に入りたいと?』
†
「アイリス。アイリス……」
彼は気に入らなかった。
自分が弱かったことが。世界が変わらないことが。話したいこと沢山あったのに、伝えられなかったことも。知りたかったことも。葬儀に用意された彼女の肖像画が妙に目元と輪郭が凛々しくて現物とかけ離れたヘタクソだったことも——
その時。意識の外から衝撃が来た。
「いい加減にしろよ、ホワイト」
彼を殴ったのは彼の友人。
ラジェシュ・クリシュナ・スィン州知事であった。
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