世界大戦史
†
[聖暦]一九五〇年。
帝政圏の盟主である帝政ゲルマニアは圧倒的な軍事力――精強な魔導戦力と新型量産兵器を融合させた電撃作戦によって、足並みの揃わない王州諸国をまたたく間に瓦解させた。
すべてが想定外の事態であった。あらゆる国家が無関係ではいられなくなった。
ゲルマニア有利とみた
王州海峡を挟みかろうじて健在であった
その盟主、帝政ゲルマニアは無敵であった。
新鋭の
きわめつけは、数百年もの歴史を誇り、ただひとりで戦場を支配する帝政名家の〈魔導師〉たち……!
量産兵器ですら埋め難い戦力差に、唯一無二の魔導戦力がとどめを刺す。世界はこうして、専制国家の手に落ちるかに思われた。
しかし、いまだ戦火の及ばぬ大国が在った。
大聖洋をへだてた聖大陸の、自由の国――
ラザルス・レイら建国の英雄たちによる独立宣言以降、
合聖国は戦った。国家の自存自衛のために。人々の幸福のために。自由と民主主義の信念のために。
すべてを懸けて、王州諸国の救援へと赴いた。
そうして……敗北した。多くの未来が奪われ、かつての誇りすらも失い、惨めに聖大陸へと逃げ帰る。
されど人の歴史は続く。すべてを失った人々がなお生き延びる日々も。戦場でついに死ねずむざむざと生き残ってしまった英雄たちの戦いも。次の戦争へと至る、つかの間の平和も。
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