第11話 私の過去(美華視点)

 今日は真夢まゆちゃんと遊ぶ日だ、友達になって以来私たちは頻繁に遊ぶようになった、最初は幸也のことが好きだなんて勘違いしてたけど今はむしろ一番の友達かもしれない、だって、私のことを応援してくれるから。


――普通じゃないよ!おかしいんじゃないの?!――


 中学生の時、親友だと思っていた女の子に幸也への気持ちを相談したとき、彼女はそう言って私の気持ちをあってはならないものだと否定した、私だって実の兄妹で恋愛なんてできるはずがないと思ってる、だからこそ私は幸也のことを諦めようとした。


「ふふ、諦める必要なんてないのにね」


――お兄さんのことが好きなんですよね?私は応援しますよ――


 真夢ちゃんは私の気持ちを肯定してくれた、頻繁に相談に乗ってくれてどうすれば幸也と私が結ばれるか真剣に考えてくれている、今日は私の能力を打ち明けるつもりだ、頭のおかしい人と思われるかもしれないけど、この能力がなければ今の世界で幸也と結ばれる可能性は限りなく低い。

 

「いってきま~す」


 準備を終えて真夢ちゃんとの待ち合わせ場所に向かう。


 10分ほど歩いたところで私は部屋に忘れ物をしたことに気が付いた、私の能力についてまとめたメモを普段入れている鍵のついた引き出しの中から出していない、今まで家から持ち出すことがなかったのですっかり忘れていた。


 持っていかなくても頭には入っているが早めに家を出たので戻っても十分待ち合わせに間に合う。


「メモがあった方が話しやすいもんね」


 私は少し速足で家に向かう。




 家に着き玄関前からリビングをちらりと見ると3人が真面目な顔をして話している、何やら重要な話のようだ。


(邪魔しても悪いし能力を使っておこうかな)


 私は3人に私から出る音がすべて聞こえないよう能力を発動し、玄関の扉を開けて自分の部屋へ向かう。


 リビングの前を通り過ぎるとき、


「――最近―――幸也―良くなった――」


「―そうだね――美華は――」


 (幸也と私の話をしてる?)


 私は少し興味が湧いて会話を聞いてみたくなった、能力を使っているので気づかれることもないだろう、扉に耳を当て会話の内容に集中する。


「――のかもしれないな…それに、今は結衣さんも幸也もいる、もうあんなことにはならないと信じよう…」


 お父さんが話している、あんなとことは何だろうか、いつの間にか家族の中で何かあったのだろうか。


「父さん……」


「だが、もう少し待ってくれないか、あと一週間でいい、まだ少し勇気が足りないんだ、そしたら僕から美華に話すよ、ってことを…」


「え……」


(お母さんが死んだ?でも幸也とお父さんと一緒に今話して…、でも確かにお母さんが死んだって…じゃあ、あのお母さんは…本当のお母さんじゃない…?)


「ヒュッ…ハッ…ハッ…ハッ…」


 息がうまく吸えない、考えるほど何か大事なことを忘れている気がして――


 ズキン


 頭痛が走る。


「いたっ!」


 ズキンズキンズキン――


「う、うぅ……」


 頭痛が強くなり意識がもうろうとしてくる、もうほとんど意識しなくても使えるようになった能力を保つことすらできなくなる。


 意識を手放す直前声が聞こえたきがした。


―美華、お母さんはずっと美華のそばにいるからね…―




「――か、美華、起きて、美華」


 おかあさんのこえがきこえる、おきなきゃ、でもまだねむい


「うーん、おかあさんおこして」


「しょうがないわね、ほら、朝よ~、起きましょうね~」


おかあさんがせなかをおこしてくれる、だんだんめがさめてきた


「おかあさんおはよ~」


「おはよう美華、早くしないとお父さん仕事に行っちゃうわよ~」


そういわれて、とたんにめがさめる


「!!、おとうさんのおみおくりみかもする!」


「はいはい、じゃあ、早くお着替えしましょうね~」


「うん!!」


わたしはおきにいりのふくにきがえてげんかんにむかった


「おお、美華起きれたのか!えらいぞ~美華」


おとうさんがあたまをなでてくれる、とてもきもちいい


「えへへ」


「それじゃあ、美華も来たことだし、行ってきます、美華、美穂みほさん」


 みほ?おかあさんてみほってなまえだっけ、ゆいってなまえじゃなかったっけ


「いってらっしゃい、あなた」


「いってらっしゃい!おとうさん」


「さあ、美華も幼稚園の準備しましょうね~」


「うん!」


おかあさんのかおをみたけど、なにかいわかんがあった……そうだ、いまの私のおかあさんは他にいる、けどこの人もお母さんだ、そうだ、私のお母さんはもう…


『思い出した……』


その瞬間、目の前のお母さんは消え、次に現れたのは、病院のベッドで寝ているお母さんの姿だった。


「おかあさん!おかあさん!」


「美穂!しっかりしろ!頑張れ」


お母さんには沢山の点滴と機械がつけられている。


『そうだ、お母さんは突然倒れて、救急車で運ばれて…』


ピーーー


「すみません、神田さん、私たちも全力を尽くしましたが……クソっなんなんだこの病は!!」


「おかあさん!おかあさん!おきてよ!う、うわああああん」


「ぐっ、美華…!!ううぅ、美穂さん…!」


 お父さんが幼いころの私を抱きしめている。


『お母さんは原因不明の病で死んだ……』


 目の前の光景が変わり今度はベッドに寝ている私の姿、その姿は私自身でも見ていられないほどやつれており、まともに食事をとってないことがわかる。


「………」


「美華……、雑炊を作ってきたよ…食べてくれないか…?」


「………」


 お父さんの言葉へ昔の私は反応を示さない、まるで人形か何かのようにただいるだけ。


『私はお母さんが死んだ事実に耐えられなくて……考えることを放棄した、現実を見ることをやめた』


「うう、美華…頼む美華…食べてくれ……病院へ行けば点滴を打ってくれるが…このままでは美華まで……すまない美穂さん…やっぱり僕だけでは…」


『そうか、これがお父さんの言っていたなんだ…』


また目の前の光景が変わる、今度は見覚えのある顔が見える、私が知っているものよりもかなり若い。


「美華ちゃんこんにちは、私は結衣って言うの、よろしくね」


「………」


「こっちは、息子の幸也、さ、幸也も挨拶して?」


「こんにちは、みかちゃん……」


「………」


二人の声に私は反応しない。


「美華、この人は新しいお母さんになるんだよ、幸也君は美華のお兄ちゃんだ、これからは3人で美華を支えるからね」


「お”……おがあ”…さん……?」


「美華!!、僕がわかるかい?お父さんだよ!、美華?」


「お…どう…ざん」


私の声は長い間出していなかったせいで、ガラガラだ。


「そうだよ!お父さんだよ!ああ!あぁ、よかった…!よかったよ美華!」


「お…に”いぢゃん」

 

 私は幸也へ手を向けて話す


「そうだ!そうだよ、幸也君はこれから美華のお兄ちゃんになるんだ!」


『この時…私は、お母さんと幸也の記憶をんだ、結衣さんと幸也を本物の家族にすることで自分の心を守ろうとした』


また光景が変わる。


「お母さん!幸也!お父さん!早く行こ!」


小学生になった私が走っていく。


「善浩さん…このままでいいんですか…?」


「ああ、今はこのままで…もうあんな美華は見たくない…幸也も、美華にはあの頃のことは話さないようにね」


「は、はい、父さん」


「大丈夫だよ幸也、僕は君に暴力を振るわない、今すぐ信じろとは言わないから、まずはそのことだけ覚えてくれないか?」


「す、すみません…わかってるんですが、どうしても反応してしまって…」


「いいんだよ、でも、その他人行儀な敬語は直すべきかな…ははは」


「ど、努力します…」


「みんな!話してないで早く行こ!」


「ああ!今行くよ美華!」


『この時も私は聞こえていたのに、頭が理解することを拒んだんだろうな…』


『思い出したかしら美華?』


『え……』


 いつの間にか周りは真っ白な空間になり声をかけれらた方向をみるとそこには、


『お母さん!!』


『久しぶりね美華…』


 あの頃のままのお母さんがそこにはいた、私はお母さんのもとへ駆け寄り、抱き着いた。


『あらあら、成長したかと思ってたけど、まだまだ子供ね、ふふふ』


『あ、あああ、うわああん』


『よしよし、頑張ったわね…』


 その後、しばらく泣いた後、お母さんから顔を離して向き合った。


『そ、それでどういうことなの、お母さんは本物?』


『ええと、なんて言ったらいいかしら、幽霊ってことになるのかしらね、美華が心配で、ついてきちゃったのよ』


『そ、そうなんだ…』


『そういえば美華!あなたいくら不良といえどあれはやりすぎよ!いくら幸也君のことが好きだからって…』


『うわあああ!なんでお母さんが知ってるの!』


『そりゃずっと一緒に居たんだもの、知ってるわよ』


『うう、ご、ごめんなさい…』


『よろしい、ま、お母さんも美華にべたべた触られてムカついてたからこれで許してあげる、でも、能力におぼれちゃだめよ、ほかの人を不幸にして幸也君と添い遂げるなんて、幸也君も私も望んでないからね!』


『は、はい…』


『私はずっと見てるんだから、あんまりひどいと、真夢まゆちゃんに言っちゃうからね!』


『え?なんでそこで真夢?』


『何故かわからないんだけど、あの子私が見えてるみたいでね、話すこともできるみたい』


『ええ!真夢って霊感少女だったの!?』


『ええ、ちなみに幸也とあなたの血がつながってないことも知ってるわ、黙っててもらっていたけど、不安だったしね』


『だ、だから私と幸也の仲に反対しなかったのね…』


『そういうことよ…あら、もう時間みたい、あなたの体が目覚めそうになってるわ』


『そ、そんな、また会えるよね?』


『ずっと一緒に居るわ、それに、真夢ちゃんを経由すれば話すこともできるしね、夢の中にもたまになら出てこれると思うわ』


『じゃあ、大丈夫、ありがとうお母さん』


『ええ、結衣さんとも仲良くね』


『当たり前じゃん!私の2人目のお母さんだし、何より義母様でもあるんだから!』


『ほんと、幸也君のこと好きねぇ…』


『もちろん!』


 思考は白く染まり、私は覚醒する。


 体を起こすとまだ外が少し明るくなったところだった、すると部屋の扉が開き、幸也が駆け寄ってきた。


「み、美華!大丈夫か?!なんともないか?!」


―――――――――――――――――――――――――

これで1章終了です、2章は今のところ書く気はあるんですが、どうにも展開が思いつかない…言い訳ですけど、人生で物語の設定すら作ったことなかったですし…


正直なところ自分としては初めての作品としてはよくできたかなと、2章は、続きが書きたい気持ちが爆発したら書くこととします。なのでかなり先になるか、もしかすると書くこと自体ない可能性も……


新しい作品もちまちま書いていきたいので、まあ、気長に待っていただければありがたいです。

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俺の人生を取り戻す GINSK @GINSK

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