最強夢送の廻遊

海川鮮魚

第1話 都へ

世界には発明・芸術・発見・頭脳など様々な分野で歴史に名を残す人物たちがいる。

これは世界最強になりその名を歴史に刻もうとする青年の物語


「...きな...い! 起......さい! いい加減起きなさい!」


「...んっ......起き...てる...」


「起きてないでしょ!入試受けれなかったらどうするの⁉︎」


「分かってるから母さん...起きるから...」


「クシナちゃんにもずっと待ってもらってるんだからね!」


まだ半分夢の中にいる青年の名は『榊 正宗さかき まさむね

今日は『ルチル王国』にある辺境の村に住んでいる正宗が入学したいと思っている『王都魔法魔術高等専門学校』の入試日の前日である。


「まだ朝の4時過ぎでしょ...まだ余裕...」


「何言ってるの!ここから王都まで何時間かかると思ってるの‼︎クシナちゃんもこのバカに何か言ってあげて」


「後...20分だけ...」


「ま!さ!む!ね!そんなに寝たいなら一生目覚めなくしてあげようか?」


「!?悪かった!起きてるから!」


正宗に話しかけた少女の名は『クシナ』

常に刀を携えた凛々しい顔立ちの美少女で正宗と同じく明日高専の入試を受ける同い年の幼馴染だ。


「なら5分以内に支度を済ませるんだな。1分オーバーする毎に君の四肢を細切れにするからな」


「わ、分かってるって!すぐ済ませるから!」


「家の前にもう馬車来てるから私は先に乗っとくぞ」


「あぁ、すぐ行く」

(ついに明日入試か...やっぱり強くなるには魔法や魔術だからな。高専に受かって首席になることが第一の目標だな!)


この世界では魔力を使うことで魔法や魔術を使用し事象を起こすことができる。魔法は『炎』『水』『風』『雷』『岩』『氷』『聖』『闇』の基本8属性からなりこれらの魔法は後天的に覚えることが可能である。対して魔術は数千人に1人の確率で持って生まれ、他人の魔術を使用することは基本できない。

魔術は持って生まれた場合、物心つく頃になると不思議と術者本人は己の魔術について知覚することができる。

そして正宗とクシナも魔術を持って生まれた1人である。


「悪いな遅くなって」


「誠意は金で示してくれ」


「お前...俺が金持ってねぇの知ってるだろ」


「王都の美味しいご飯でもいいぞ」


「俺の話話聞いてた!?」


「あぁもちろん。君がタンスの奥に少しずつ金を貯めてることくらい知っているが?」


「ねぇ!何で知ってるの!?怖いんだけど!!」


「あのーそろそろ馬車出しても大乗そうですかね?」


「あぁすみません遅くなって。出してもらって大丈夫です」


「分かりました。では王都までですね」


「ん?正宗、おばさんに何か言わなくてよかったのか?」


「?1日2日で帰るんだから別にいいだろ」


「は?」


「え?」


「お前...入試のパンフレット見てないのか...?」


「パンフレット...ああ!そういや来てたわ...後で見ようと思ってそのまま今日まで忘れてた...」


「お前本当にバカだろ‼︎」


「い、いや!忘れちまったもんはしょうがないだろ」


「はぁ...で?どうするんだ?」


「どうするって何が?」


「馬車を少しの間止めてもらっておばさんに何か言いに行かないのかってことだ」


「バカ言うな!今更入試パンフレット見てない何て言ったら殺されるに決まってんだろうが!」


「バカは君だろ...普段から誰よりも強くなる!とか意気込んでるくせにおばさん相手には勝てないんだな」


「母さんは例外だ!母は強しって言うだろ?」


「まぁ入試終わって帰ってくる時にどうせバレるだるだろうけどね」


「頼む!誤魔化すの手伝ってくれ!」


「断る...と言いたいところだが、王都の美味しいもの食べたら気が変わるかもな〜」


「わ、分かった。王都行ったら好きなもの1つ...」


「3個」


「に...2個で何とか...」


「3個」


「あの...俺本当に金が...」


「3」


「分かりました...うっ...俺の貯金が...!」


「よろしい」


「そのかわり本当に頼むぞ...それと結局入試ってどんな感じなんだ?去年までは1日目で筆記と実力測定、2日目で面接だけで終わりだったはずろ?今年からは何か変わったのか?」


「あぁ大分変更されたらしくてな。1日目は筆記のみで次の日から実力測定なんだが期間が3日間あって実力測定が終わったら1日空いて面接、その次の日には合否の発表があるらしい」


「実力測定3日間もあるのかよ」


「そうらしい。しかもその実力測定はぶっ通しでやるらしいな」


「と言うと?」


「一度家や宿屋に帰らず泊まりでずっとって事だ」


「マジかよ!」


「それともう一つ、試験は筆記が合格点に満たなかった時点で実力測定は受けられないし、実力測定で落ちた人は面接も受けられないシステムらしい。おまけに筆記は科目が記されてないな」


「マジ?」


「大マジだ」


「何でまたそんな風な試験に...」


「さぁな。ただ一つ言えるのは私は確実に合格できるだろうが正宗は筆記の時点で落ちるって事だな。だかまぁ王都魔法魔術高等専門学校は15歳以上20歳未満なら受験が可能らしいから、来年頑張ればいい。そう落ち込むな」


「落ち込んでねぇよ!勝手に落とすな!」


「でも自信がないのは確かだろ?」


「と、得意科目が来れば」


「驚いたな君に得意科目なんてあったのか!」


「お前俺をバカにしすぎだろ‼︎あるわい!それくらい!」


「じゃあ何だ?言ってみろ」


「そ、その...体育とか?」


「お前本気で馬鹿だろ」


「うっさいわ!道徳0点が!」


「なっ!誰が道徳0点だ!今すぐお前を刀の錆にしてやる!」


「そういうところじゃアホ!」


「この男本当に斬ってやる!」


「あ、あのーお客さん...馬車ではあまり暴れないでください...」


「......」


「クシナ、人に迷惑をかけるな!」


「お前だろうが!」


「あ、あのー本当にもう少しお静かに...」


2人の言い合いが収まらない中、馬車は王都へと向かい3時間ほどが経過した。


「もう結構経ったよな3,4時間くらいか?...王都まで後どれくらいなんだ?」


「さぁな私も行ったのは随分前だし覚えてないな」


「王都までは途中で休憩も挟むので半日ほどですね」


「ま、マジか。一番早い馬車でこれか...本当に俺らの住んでる場所田舎だな」


「ま、まぁ田舎にもいいところはありますからね...ん?あれは?」


「御者さんどうかしましたか?」


「⁉︎お、オーガです!オーガの群れが‼︎」


「‼︎」


オーガ:力こそ強いが知能が低く皮膚が緑色で身長が2mを超える人型の魔物である


「に、逃げましょう!今なら気づかれてません!王都に着くのが何時ごろになるのかは分かりませんが」


「大丈夫です。少しここで待っててください」


「え...?お客さん何を...」


「クシナ」


「分かってる」


「行くぞ」


2人はそれだけ言うと同時に馬車を飛び降り素早く駆け出し200m近く離れていたオーガの群れの元へほんの数秒で到達した。

正宗とクシナがこれほど速く動けた理由はひとえに魔力で自信の肉体を強化していたからである。

魔力とは身体に宿る魔法や魔術を使用する際のエネルギーだが強化したい部位から魔力を体外に放出することによってその部位を大幅に強化することができる。

他にも魔力にはそれぞれ人によって色があり基本は半透明だが魔力を鍛えることによって色が濃くなっていったりもする。

幼い頃から修練を積んでいた2人の魔力は色濃く、洗練されていた。


(オーガは全部で11体!俺がより多く倒す!)

(オーガは全部で11体!私がより多く倒す!)


「「まず一体」」


そう言い2人は同時にオーガを一方は拳で一方は刀で攻撃した。正宗が殴り飛ばしたオーガは離れていたもう一体を巻き込んで遠くに吹っ飛んでいき、クシナは一体の首を切ると即座に近くのもう一体の胴を真っ二つにした。


((あっちも2体倒してる‼︎こうなったら‼︎))


正宗とクシナは同時にオーガ3体を目の前に技を繰り出した。


圧縮された魔力コンプレスカノン!」


「居合!」


正宗の魔力による砲撃を食らったオーガ3体は跡形もなく消し飛び、クシナの居合によって他のオーガ3体も目にも止まらぬ速さで胴と下半身が泣き別れになった


「「ラスト‼︎」」


残った一体のオーガは腹に正宗の一撃をくらい、首にクシナの一刀をくらい一瞬で倒された。


「くっそー!ギリ負けた!」


「ふふん!正宗、鍛錬が足りないんじゃないか〜?」


「ここぞと言う時に煽りやがって...!いや、お前が煽るのはいつものことか」


「別に普段は煽っていないだろ!バカにしてるだけだ」


「なら尚更ダメじゃねぇか‼︎」


「正宗は本当にバカなんだからいいだろ」


「バカじゃねぇよ!?」


「はいはい。戯言はそのくらいにしてオーガの魔石取ったら馬車に戻るよ」


「戯言⁉︎言い方酷くない⁉︎まぁそうするけどさ」


クシナの言う魔石とは身体の殆どが魔力で構成された生物である魔物の死後、一部の魔力が集まり結晶化したものである。魔石の用途は様々であり日常生活には欠かせないものとなっており、そのため世界共通で魔石は基本どこでも売ることができる。


「御者さん。終わりましたよ」


「お、お強いんですね...お二方とも...な、何はともあれこれで予定通り王都へ向かえそうです」


「また魔物が出たら言ってください!俺らで対処しますので!」


そう言うと馬車は再度王都へ向かって走り出した。それから半日ほど経ち特にトラブルもなく王都が目と鼻の先というところまで来ることができた。

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