第11話

 「でも海外ってなるとお金もかかるよね」

 

 「たしかに」


 私と楓の言葉に一瞬だけ祐美は表情を曇らせる。

またすぐに明るい表情に戻って嬉しそうにこちらを見つめた。


 「2年生の夏休みに行こう!それまでバイトしてお金貯めてさ!」

 

 今が一年生の11月だから確かに今から貯めれば行けないこともなかった。


 「バイト頑張るかー」

 楓はすぐに賛成して、その流れで私たちは来年の夏休みに海外へ行くことが決まった。


 それから私たちは海外に行くならどこがいいか、行ってどんなことをしたいかを好きなように話し合った。


 授業開始の時間になって、話を切り上げ教室へ向かう。

 「あかり、絶対カメラ持ってきてね」

 ふと祐美に言われて、そのつもりではいたけれど写真を楽しみにしてくれていることが少し嬉しくなった。


 家に帰ってから何となくスマホでヴェネツィアを調べる、あまりどんなところか知らなかったけど、そこが水の都と呼ばれていて街中をボートのようなものが走っていることを知った。

 

 こんなふうに写真を撮ったら綺麗に映るなとか、ここで写真撮りたいなとかを考えながらスマホを見ていると少しずつ海外に行く楽しみが増していくのを感じた。


 まずはバイトを頑張ろう。最寄りの駅の居酒屋でアルバイトをしていた私はあまりシフトには積極的には入っておらず、月の稼ぎも少なかった。


 遊べる日は減るけど仕方ないかなと思いながら翌月のシフト希望を多めに出すことに決めた。


 それから何日か経って翌月のシフトが完成する。

希望を出した日にちはほとんど入ることができて、いつもの倍くらいは稼げそうだった。


 「あかりちゃん珍しいねこんなにシフト入れるの」


 店長に言われて事情を話す。


 「お、いいね海外、大学生っぽい」


 「店長は海外行ったことありますか?」


 「ハワイとパリになら行ったことあるよ」


 「え、意外」


 店長はなんでだよといった表情をしていたけれど行った時の話をしてくれた。


 海外に行く時はお店はある程度リサーチしておいた方がいいこと、乗り物は特にちゃんと調べておくことなどを教わった。

 

 

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