第17話 対決! ブレアVSマリアーノ

 ブレアがパーティー残留を賭け、マリアーノと対決する。


 そう決まった数時間後。いよいよ、決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。


 場所は、マリアーノが全力で魔法を使っても大丈夫という理由で、街から少し離れたところにある草原だ。


 向かい合う、ブレアとマリアーノ

 そしてそれを見守るのは、俺、ガストン、エレナという、残るパーティー全員だ。


「ブレア、大丈夫かな? 勝ってパーティー残留できるかな?」

「無理だろうな」


 祈るように呟いた俺の言葉を、ガストンがバッサリ切り捨てた。


「お前、少しは俺の気持ちを汲み取ってくれ!」

「二人の実力を考えたら当然だろ。そもそもだな、本当にあいつのことが好きなら、贔屓なんてせずに正当な評価をするべきだ」

「そうですよ。付き合ってるからって理由でパーティーにいさせるなんて、ブレアさんのためにもなりません」


 うぅ……正論だ。

 本当は、付き合っても好き合ってもいないんだけど、そう宣言した以上、こんな説教をくらうのも仕方ない。


「まあ、お前が言っていたように、本当にあいつにピッタリの、これなら無双できるって職業があるなら別だがな」

「そういえば、今のブレアさんは、いったいどんな職業なのですか?」


 そうなのだ。この状況を打開するには、ジョブチェンジしかない。

 そう思い、あれからブレアと二人、どんな職業がいいか必死で考えた。この勝負に負けるとパーティーにいられなくなるから、本当に必死で考えたんだ。

 だが……


「……ブレアは今、無職だ」

「はっ? 今、なんて言った?」


 信じられないという顔で俺を見る、ガストンとエレナ。

 わかっているさ。ただでさえ弱いブレアが職業なしじゃ、いよいよ勝ち目ゼロだってことくらい。

 けど、しょうがないじゃないか!


「どの職業がいいか考えて、あれでもないこれでもないって悩みに悩んで、結局決められなかったんだ」


 ガックリと肩を落とす俺を、ガストンとエレナは可哀想なものを見る目で見つめていた。


「まあ、本当に危ないと思ったら、タンクの俺が庇ってやるか」

「負けた後は、私が回復魔法で治しましょう」


 二人とも、すっかりブレアがやられる前提で話しているな。

 けれど無理もない。


 そしてブレアもまた、この戦いが絶望的なものだとわかっているのだろう。

 一応剣を持って構えてはいるが、どう見たってへっぴり腰になっていた。


「あんた、本気で私と戦うつもりなの? どうせ無駄なんだから、さっさと謝って降参すれば?」

「そ、そうはいきません。ぜ、ぜぜぜ、全力で戦います!」


 かわいそうに。ブレアの声は、思いっきり震えていた。


 どうせ勝てないんだし、いっそマリアーノの言う通り降参させるべきかもしれない。少なくとも、俺はそう思った。


 だがブレアは、震えはしても、戦うことそのものから逃げようとはしなかった。


「ぼ、僕を信じてくれたアレックスさんのためにも、逃げるわけにはいかないんです!」


 震えながら、それでも懸命に叫ぶブレア。

 あいつ。信じるって言った俺の言葉、そこまで真剣に受け止めてくれているんだな。

 その純粋さが、とても嬉しい。


 マリアーノも、その純粋さに心打たれて手加減してくれたらいいのに。

 なんて考えた俺は、純粋とは程遠いんだろうな。


 だが、そんな俺の不純な願いは、全くと言っていいほど叶わなかった。


「あぁ? アレックスのためって、ラブラブアピールでもしてんの!? ふざけんじゃないわよ!」


 な、なんだ?

 マリアーノのやつ、突然キレだしたぞ!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る