第16話 やっぱりパーティー追放!?

 俺とブレアは付き合ってる!

 だから、これからもこのパーティーにいさせる。


 それで納得させようとした俺の目論見は、見事失敗した。


 考えてみれば当然か。

 そんな理由で贔屓したんじゃ、俺がこいつらの立場でも怒る。

 ブレアだけでなく、俺にもだ。


「見損なったぞ」

「最低です」

「この××××! ×ね!」


 うぅ……いくらなんでもそこまで言うことないじゃないか。俺だって傷つくんだぞ。


「ま、待ってください! アレックスさんは僕のために……」

「だ・か・ら! それがダメだって言ってるんでしょうが!」


 ダメだ。俺もブレアも、お互いを庇えば庇うほど泥沼にハマっていく。

 このままじゃ、ざまぁされる前にこのパーティーは終わってしまう。

 終わるのは俺だけかもしれんが。

 そして、ついに恐れていた言葉が言い放たれる。


「もういいわ。言い訳なんていくらしてもムダだから、さっさとこのパーティーから出て行きなさい」


 だよな。この流れじゃ、そう言われるのも自然な流れだ。

 付き合ってるなんて嘘ついたことを後悔するけど、今さらさっきのは嘘でしたなんて言えないよな。


「ま、待ってくれ。パーティー追放は考えなおしてくれ。確かに俺は、ブレアに特別目をかけていた。けどそれは、こいつがものすごい実力を秘めているからだ。パーティーにいた方が、絶対プラスになる」

「その実力もダメじゃないのよ! そんなでまかせでどうにかなると思ってるの!?」


 でまかせじゃない。なんて言っても、到底信じてもらえないだろうな。

 元々実力不足と言われていた上に、隠れて付き合っていたってことになったんだ。

 俺が何を言ったところで、今のみんなには届きそうになかった。


「どうする? お前がこれ以上勝手な理由で贔屓を続けるなら、俺たちも身の振り方を考えさせてもらうぞ」

「私も、信用できない人とこれ以上パーティーを組むことはできません」


 もはや万事休す。

 諦めかけたその時だった。


「ま、待ってください!」


 声をあげたのは、これまですっかり小さくなっていたブレアだった。

 ブレアは震えながら、まるで俺を庇うように、一歩前に出る。


「た、確かに僕は、今まで役立たずで、みんなに迷惑ばっかりかけてきました。けど、アレックスさんは言ってくれたんです。僕は、すごい力を秘めているって! ただ慰めるためだけに言ってくれただけかもしれない。けど僕は、そう言ってくれたアレックスさんを信じます!」

「ブレア、お前……」

「だからお願いです。このパーティーに残るための、最後のチャンスをください!」


 そうして、深く深く頭を下げる。

 ついさっき、自分からパーティーを抜けると言っていたばかりなのに。

 俺の言葉、こいつの心に、こんなにも深く刺さっていたのか。


 ブレアの訴えに、他のメンバーもどうしたものかと顔を見合わせる。

 頼む。ブレアは本当に、すごい力を秘めているんだ。それに、今みたいに人の言葉を素直に受け取り、それを力に変えようとする、真っ直ぐで純粋なやつなんだ。

 今はまだ実力不足かもしれない。

 だけどどうか、こいつのいいところを見てやってくれ!


 祈るような気持ちで、次の反応を待つ。

 すると、マリアーノが口を開いた。


「…………いや、そんなのただのお世辞でしょ」


 ちがーう!


 ブレアの必死の訴えも、マリアーノの心には何も響かなかったようだ。

 それどころか、今もめちゃめちゃ怒ったままだ。

 そして、額に青筋を立てながら、こんなことを言ってきた。


「そんなに言うなら、私と勝負してみる? あんたの言う、最後のチャンスってやつ。私に勝ったら実力を認めてパーティー追放はなしにするけど、どう?」

「待て。いくらなんでも、それは……」


 ブレアに適した職業が見つかっているならともかく、そうでない今、マリアーノに勝つなんてとても不可能だ。

 やめさせないと。


 だが、俺がそう言う前に、ブレアは叫ぶ。


「や、やります! やらせてください!」

「お前、何言って……」


 慌てて止めようとしたが、遅かった。

 マリアーノもブレアも既に十分すぎるほどやる気になっていた。


「いい度胸ね。ボコボコにやられても、文句言わないでよね」

「ぜ、全力で相手します!」


 こうして、ブレアのパーティー残留をかけた、二人の対決が決まったのだった。

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