第15話 俺たちは付き合ってる!
「……とまあ、ブレアが男と性別を偽ってパーティーに入ったのには、こういう理由があったからなんだ」
「今まで嘘ついていて、すみませんでした!」
ブレアのあれこれを、事務所で他のメンバーに説明する俺たち。
ギルドが戦士は男しか募集していなかったのが原因だが、求人を依頼したうちは本当は性別なんてどうでもよかったし、やむにやまれぬ事情ということで、そこは大目に見てほしかった。
「なるほどな。そういう理由なら、女だと黙っていたのは別に構わない。お前たちはどうだ?」
「まあ、それならとやかく言うつもりはないわよ」
「抗議するなら、ブレアさんでなく勝手にそんな条件を付け加えたギルドでしょう」
よかった。
だが、そう思ったのも束の間だった。
「けどさ、ブレアがこのままパーティーにいていいかは話が別よ。男か女かじゃなくて、弱すぎるのが問題なの」
「うっ!」
その話、まだ続けるつもりだったのか。
そりゃそうだよな。まだ何も解決してないんだから。
「ブレアさんには申し訳ないのですが、私たちの旅はこれからますます過酷になっていくことでしょう。酷なことを言うようですが、そんな中力不足にも関わらずついてきてしまっては、ブレアさんにも私たちにとっても、良くないことになるのではありませんか?」
くっ。
悔しいが言ってることはその通りなんだよな。
ブレアはまっすぐな良い奴だってことはわかったし、いつか覚醒するかもしれないってのを除いても、これからもこのパーティーにいてほしい。
だが今の能力値で考えると、どうしたって力不足なのは間違いないんだよな。
だ、だが、ここで正論に屈するわけにはいかない。無理にでものりきらないと。
「だ、だから、ブレアも強くなるために色々ジョブチェンジを試しているだろ」
「そのジョブチェンジも上手くいってないだろ」
「それはだな……」
まともに言い合っても勝ち目はなさそうだし、のらりくらりとかわして誤魔化そう。
だがそんな中、マリアーノが腹立たしげに机を叩いた。
「いい加減にしてよね! 毎日毎日こんなのに振り回されて、こっちは迷惑なのよ!」
やべぇ。マリアーノ、めちゃめちゃ怒ってる。
「だいたいアレックス。前から思ってたけど、あんたどうしてそうブレアの肩を持つのよ!」
「べ、別に肩なんて持ってなくてだな……」
いや、思いっきり肩持ってるな。
元々、前世の記憶が戻る前の俺がブレアをパーティー追放しようとした時、真っ先に賛成したのがマリアーノだった。
なのに突然手こんなひら返しされて、納得できないことがたくさんあるんだろう。
だが、そこから彼女が言い出したのは、実に思いもよらないことだった。
「そういえばさ。あんた、さっき風呂場で、裸のブレアと遊んでたのよね」
「えっ……?」
そういえば、俺がブレアを押し倒し、みんながそれを白い目で見てきた時、ブレアはそれを庇うため、ふざけて遊んでいただけだって言ってたっけ。
「それってつまり、あんたは前からブレアが女だって知ってたってこと?」
「い、いや……」
違うぞ。俺が知ったのも、ついさっきの話だ。
だがここでそれを言うと、女だって知ってすぐ、裸の状態のあいつとふざけて遊んでたってことになる。それは、非常にまずい。
前からの知り合いならいいのかは知らんが、女と知ってすぐよりはマシかもしれない。
口ごもる俺を見て、肯定と捉えたのだろう。
マリアーノは、さらにこんなことを言い出した。
「まさか、実は二人は付き合っていて、だから贔屓してパーティーにいさせようとしているんじゃないでしょうね」
「なぬっ!?」
「わざわざこの家にブレアを住まわせたのだって、同性してイチャコラやるためだったんじゃないの?」
なんという発想の飛躍!
違うからな。贔屓はまあ、してないとはいえないが、それはこいつに秘められた力があるから。この家に住まわせてるのだって、家賃の問題があっただけだ!
しかし、それを聞いたガストンやエレナも、なるほどって感じで納得しかけてる!
「ご、誤解だ。まったくの事実無根だ!」
「じゃあ、なんでこいつを贔屓してるのよ」
「それは……」
まずい。前世の記憶を取り戻しただのこの世界をマンガで見ただの言っても、信じてもらえるはずがない。
俺とブレアが付き合ってるって説の方が、遥かに説得力がある。
いや、だが待てよ。
それなら、いっそそっちの説を採用した方がいいんじゃないか。
このパーティーのリーダーは俺だ。リーダーの特権として、大事な恋人の面倒を見たい。そう真摯に訴えたら、みんなの気も変わるんじゃないだろうか。
どのみち、このままじゃ乗り切るのは難しい。
だったら、一か八かの賭けに出ようじゃないか。
「ああ、そうだよ」
「なっ!?」
「俺とブレアは付き合ってる。それで、こいつにはずっとそばにいてほしいと思ってる。だから、ブレアにはこれからもパーティーに入ったまま、ずっと俺のそばにいさせ続ける!」
この宣言を、驚きながら聞く三人。あと、ブレア。
勝手に付き合ってるなんてことにしてすまん。だが、こうでもしないとお前をパーティーにいさせられないんだ。
「そうだよな、ブレア!」
「えっ……えぇっ!?」
「そうだよな! 俺とお前は付き合ってるよな! お前にそばにいてほしいから、パーティー抜けるのをずっと引き止めてたんだよな! そうだって言ってくれ!」
これで、ブレアが馬鹿正直に違いますと言ったらアウトだ。
頼む、空気を読んでくれ!
「…………そ、そうです。僕は、アレックスさんとツキアッテマス」
おぉっ! 見事空気を読んでくれた!
これで、ブレアの方はOK。なら次なる問題は、これを聞いた三人が認めてくれるかどうかだが……
「はぁ? あんた、ふざけんじゃないわよ」
あ、あれ……?
「お前、そんな理由で引き止めてたのか。しかも、特別待遇までして」
「贔屓です。公私混同が酷すぎます」
一か八かの賭けに出たこの方法。
だがどうやら、賭けは失敗したらしい。
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