第11話 ブレア、驚愕の事実!

 ビーストテイマー、鑑定士が失敗しても、ブレアの職業探しはまだまだ続く。

 こうなったらもう、数打ちゃ当たるで手当り次第やっていくしかない。


 そう思ったのだか、どうにもうまくいかない。


 踊り子になったら踊りが不気味すぎて苦情が来て、盗賊になったらものを盗むという罪悪感から胃炎になった。

 ならば、原点に戻って前衛職。シンプルに武道家はどうだとやってみた。

 その結果がこれだ。


「ブレア、しっかりしろ! 傷は浅いぞーっ!」


 ザコモンスター一体に、ものの見事にやられてしまった。


「エレナ、ヒールだ。ヒールをかけてやってくれ!」

「もうやってます。どうしてあんなモンスター相手にこんなにボコボコにされるんですか! 僧侶の私より弱いじゃないですか!」


 幸い、ヒールをかけたおかげで傷は治ったが、服はボロボロ、体中泥だらけ。

 見てるこっちが引くくらいの、無惨な有様だ


「お、おい、大丈夫か」

「うぅ……ごめんなさい。僕、武道家には向いてないみたいです」


 ああ。言われなくても、それはよーくわかったから。

 仕方ないので、一旦俺の家に戻って、風呂に入ってもらうことにしたのだが……


「まったく、なんなのよあいつは!」


 ブレアが風呂から上がるのを待っている中、マリアーノが怒りの声をあげる。

 こいつは、ブレアの件に関しては前々から不満を持っていたが、今回は特に怒ってた。


「職業探しに付き合ってやってるのに、どれも全然ダメじゃない。全部普通以下よ!」

「ま、まあ落ち着け。ブレアだって頑張って……」

「ガラクタの掛け軸買ったのは、あんたも同罪だからね」

「うっ……」


 それを言われると辛い。おかげで俺は、現在借金中だ。


 だが、不満があるのはマリアーノだけじゃない。

 ガストンやエレナも、このブレアの職業探しにはいい加減疲れてきているようだ。


「こんなにもたくさんの職業を試してどれも普通以下なんてな。あいつの職業適性はどうなっているんだ?」

「それはまあ、良くはないよな」


 職業適性。

 それを語るためには、そもそもこの世界における職業とは何かを説明しなければならないだろう。


 この世界の職業。簡単にいうとそれは、能力の上乗せのようなものだ。

 例えば転職の神殿で戦士にジョブチェンジすると、力が強くなり、ある程度の剣術が使えるようになる。これが魔法使いなら、魔力が高まり

 魔法が使えるようになるというわけだ。


 戦士じゃなくても剣を握って振り回すことはできるが、能力の上乗せが有ると無いとでは、力の差は歴然だ。

 ジョブチェンジした時の能力上昇だけじゃない。修行して鍛えた時の効率も、適した職業についていた方が格段によくなる。


 とはいえ、ジョブチェンジすれば誰もが一流になれるというわけじゃない。

 同じ戦士にジョブチェンジしても、どのくらい能力がアップするか、技術が身につくか、伸び代がよくなるかは、人それぞれ。

 戦士だといまひとつの能力値しかなかったやつが、魔法使いになったとたん、劇的に強くなることもある。

 そんな職業ごとの能力上昇具合を、職業適性と呼ぶ。


 あらゆる職業にジョブチェンジしても普通以下のブレアは、この職業適性が全方位にとんでもなく低いってことだ。

 普通は、戦闘職にジョブチェンジしてあんなにも弱いなんてありえないんだそ。


「なあ。この前言ってたパーティー追放だが、本気で考えた方がいいんじゃないか?」

「ガストン。お前まで何言ってるんだよ」

「私も、同じ意見です」

「エレナまで……」


 まずい。せっかくみんなを説得してエレナの追放を止めたってのに、これじゃ結局そうなってしまう。


「俺だってこんなこと言いたくはない。だが、いつまでもあいつの職探しに付き合うわけにはいかんだろ」


 それは、正論だ。

 俺たちだって勇者パーティーとして、人を脅かす魔物を、そして魔王を倒すという役目がある。

 俺たち、こう見えても最終目標は魔王討伐なんだよな。

 ブレアの職探しにかかりきりなのは、どう見ても良い状況じゃない。


 けどな、ブレアに無双できるほど適性の高い職業があるってのは間違いないんだし、そもそも追放したら俺がざまぁされるんだ。


 ここで、こいつらの正論に屈するわけにはいかない。


「そ、そうだ。ブレア、もう風呂で汚れは落とせたかな。少し様子見に行ってくるかな〜」

「あっ、待ちなさいよ!」


 待てと言われて待つやつはいない。

 追いかけてきても、男のブレアが入浴中の風呂場に逃げこめば、とりあえずマリアーノとブレアは入れないだろう。

 ガストンは冷静なやつだから、他が揉めれば揉めるほど、とりあえず落ち着かせようとするはずだ。


 そんな見事な作戦のもと、俺は風呂場のドアを開いた。

 だが……


「よう、ブレア。少しはさっぱりしたか?」

「えっ────?」


 次の瞬間、俺は固まった。

 そこにいたのは、裸のブレア。いや、ここは風呂場なんだから、裸なのは当然だ。


 しかし、しかしだな。

 その裸のブレアの体が、俺が普段見慣れているものと違うんだ。

 なんといえかその、胸が僅かに出っ張ってて、股にあるはずのものがないんだ。


 つまり、これは────


「ブ、ブレア。お前、女だったのか?」

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