第8話 ジョブチェンジしよう!
この世界では、ジョブチェンジは基本的に転職の神殿と呼ばれる場所で行われる。
そうすることでそれぞれの職業に合ったステータスやスキルを得ることができるのだ。
もっとも、中には俺の勇者みたいな例外もあるし、ジョブチェンジしても、ステータスやスキルをどこまで伸ばせるかは、本人の努力と才能しだいだけどな。
ブレアに、そんなジョブチェンジをさせようじゃないか。
そう決めた翌日。俺とブレア、それにパーティーメンバー全員は、転職の神殿にやってきた。
だが……
「えっと……皆さん。今日は僕のジョブチェンジのために集まってくださって、ありがとうございます」
「集まったって言うか、集められたんだけどね。追放するのをやめたと思ったら、今度はジョブチェンジ? いったい何を考えてるのよ」
ブレアが挨拶をしたところで、マリアーノが不機嫌そうに突っかかってくる。
元々、ブレアがパーティーに残ることに不満を持っていたやつだ。
ジョブチェンジに付き合わされるのも、面白くないんだろう。
「まあまあ。確かにお前の言う通り、今までブレアがあまり活躍できていなかったのは事実だ。だからこ、思い切ってジョブチェンジして、より活躍できる方法を探そうじゃないか」
俺がなだめると、マリアーノも渋々といった感じで口を閉じる。
お前、少しはブレアに優しくしないと、後々俺のかわりにざまぁされるかもしれないぞ。
「確かに、今までのブレアさんの実績から考えると、ジョブチェンジするのも悪くないかもしれませんね。それでいったいどの職業にするのですか?」
おぉっ。エレナ、いいこと言ってくれる。
しかし、どの職業にするか。それが問題なのだ。
俺が読んだ『勇者パーティーを追放されたけどジョブチェンジしたら無双できてザマァした件』は、まだ本当に序盤の序盤。ブレアがパーティーを追放されたところまでだった。
つまり、それからどんな職業にジョブチェンジしたのか、ちっとも情報がないわけだ。
「それをみんなに考えてもらいたくて、こうして全員に集まってもらったんだ。こいつに合ってそうな職業って、なんだと思う?」
「そう言われましてもね。ブレアさん、あなた、なりたい職業ってあるのですか?」
「いえ、特には。今まで戦士一筋で頑張ってきたのて、考えたこともありませんでした」
その一筋だった戦士には、ちっとも適正がなかったみたいだけどな。
けどこうなるといよいよ困ったな。ブレア自身にも特に希望は無いとなると、本当にノーヒントだ。
するとそこで、ガストンが言う。
「パーティー全体のバランスで考えたらどうだ。今までは、魔法使いのマリアーノと僧侶のエレナが後衛。勇者のお前とタンクの俺、それに戦士のこいつが前衛だったわけだ。そこから転職するなら、やはり前衛ができそうな職業じゃないのか。例えば、武道家なんでどうだ」
「うーん、なるほど」
確かに、ガストンの言うことはもっともだ。
そもそもブレアをパーティーに入れたのだって、もう少し前衛がほしいからというのが理由だった。
そうなると、次の職業も前衛というのは理にかなっているし、武道家というのはその中でもポピュラーだ。悪くない。
だが、本当にそうなのだろうか。
確かに悪くない。悪くないはないが、何か大事なものを見落としている気がする。
「戦士から武道家に転職して無双。はたして、そんな展開が面白いだろうか……?」
何度も言うが、ここは『勇者パーティーを追放されたけどジョブチェンジしたら無双できてザマァした件』というマンガの中の世界だ。
当然、話を盛り上げるためのストーリーが考えられていて、タイトルにもなっているジョブチェンジは、その大きな要となっているだろう。
その大事なジョブチェンジ先が、武道家。それって、あまりにインパクトがないんじゃないか?
俺がそのマンガの作者なら、もっと奇抜で意外性のある職業にするんじゃないだろうか?
「ダメだ。武道家は、なんていうか面白くない」
「はっ? お前、面白さで職業を決めるのか?」
「ああそうだ。面白さ。意外性。このジョブチェンジは、そういうのを重視して決めることにする!」
「えぇっ! 僕の職業、そんなので決まるんですか!?」
慌てる一同だが、この予想、かなりいい線いってるんじゃないかと思う。
だってそうだろ。一見とても強そうとは思えない職業についたのに、なぜか実は最強。こういのが、マンガやラノベに求められる王道展開だ。
その観点からいくと、ブレアにあった職業といえば……
「よし、決めた。ブレア、お前は今日からビーストテイマーだ」
「び、ビーストテイマー!?」
そうだとも。
別名、獣使いや魔獣使いとも呼ばれる職業だが、なんだか、いかにもパーティーから追放された奴が、実は最強になるって感じがするじゃないか。
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