第6話 ブレアの努力

 ブレアが活躍するには、ジョブチェンジする必要がある。

 それに気づいた俺は、それを本人に伝えるべく、足早に家へと帰る。


 とはいえブレアのやつ、今日は休みだからな。

 必要ならいつでも駆けつけると言ってはいたが、休みの日まで仕事の話なんてしたくないって思っていたら、切り出すのは明日にするのもアリかもしれない。


「ただいま〜」


 家の戸を開けるが、返事も出迎えもない。

 ブレアのやつ、寝てるのか?


 と思ったら、家の奥から物音が聞こえてきてきた。

 あれは、道場の方だ。


「やっ! はっ! えいやっ! 」


 廊下を抜け道場に向かうと、物音だけでなく掛け声まで聞こえてくる。

 顔を出してみると、そこにいたのはブレアだった。

 彼の手には練習用の剣が握られていて、それで何度も素振りをしている。


「ブレア、何してるんだ?」

「えっ、アレックスさん? 今日は、みんなでクエストに出かけたんじゃないんですか?」

「そんなの、もうとっくに終わったよ」

「えっ? それじゃ、今の時間は……いけない! 夕飯の用意をしないと!」


 外が暗くなっているのを見て、慌て出すブレア。

 慌てすぎて、自分の流した汗で滑ってすっ転んでいた。


「おい、大丈夫か? それに食事の用意なら、俺がやるって言ってるだろ」

「でもアレックスさん、今日一日頑張っていたんでしょ。僕だって、少しは働かないと」

「けどお前だって、俺がいない間、一人で修行してたんだろ」


 さっきの素振りの様子や、時間が経つのも忘れていたのを見ると、よほど集中していたんだろう。


 もしかすると、休みだってのに、一日中そうしてたのかもしれない。


「休みの日までそんなに頑張ることないんじゃないか?」

「は、はい。でも、こういう時こそ鍛えて、少しでも力をつけなきゃって思ったんです。僕、その……足でまといですから」


 自分で言って、ガックリと肩を落とすブレア。

 まあ、今までのコイツが足でまといというのは、悲しいことにその通りだな。


 だけど、こうしてそれを何とかしようとしているのは、悪くない。努力するのはいいことだ。

 なんて思うのは、こいつが後に無双するって知ってるからだろうか。

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