第5話 ブレアがいなくても楽々クリア

「よし。今回の依頼は、これでクリアだな」

「皆さん、ケガがなくてなによりです」

「当たり前でしょ。私たちがこの程度の相手に苦戦するわけないじゃない」


 ブレアがいなくても、パーティーの仕事はとっても順調だった。


 おかしいな。

 大抵こういう時は、今まで楽勝だった相手にも大苦戦って展開になるはずなんだが。


「って言うか、足引っ張ってるブレアがいない分、いつもより楽だったんじゃないの?」


 マリアーノはそう言うと、どうだと言わんばかりに俺を見る。

 こいつ、俺の次くらいにブレアを追放するのに賛成してたからな。

 パーティーに残留させたこと、特に納得いってないみたいなんだよな。


「ま、まあ待て。前にも言った通り、あいつは今疲れていて本調子じゃないんだ。ゆっくり休めば、きっと役立つようになるから」

「前からずっとああだったでしょ」

「うっ……」


 そうなんだよな。

 正直俺自身、ブレアがいなくなって困ったことがあるとは微塵も思えない。

 このままでは、いずれブレアを本当に追放する日も近いかもしれない。


 だが、それはまずい。前世で読んだあのマンガのタイトルからして、後にブレアが無双すること。そして、俺がざまぁされることは間違いないんだ。

 なんとしても回避しなければ。


「くそっ、どうすればいいんだよ」


 パーティーメンバーと別れた後も、俺は一人悩んでた。


 せめて話の続きがわかればいいんだが、それを読む前にこっちの世界に転生したらしいからな。


「せめて、何かヒントになるようなものはないか? 第1話では、ブレアが追放されて終わり。あとわかってるのといえば、『勇者パーティーを追放されたけどジョブチェンジしたら無双できてザマァした件』ってタイトルだけ。どうすりゃいいんだよ。いや、待てよ……」


 頭を抱えたところで、ふと気になることがあった。

 タイトルにある、【ジョブチェンジしたら無双できて】という一文だ。


 俺は勇者。他のパーティーメンバーは、それぞれ魔術師、タンク、僧侶。

 このように、この世界の冒険者たちは、みんな何かしらのジョブを持っている。

 ちなみにどんな職業になっているかは、念じれば出てくるステータス画面で確認できるぞ。


 そして、ここからが本題だ。

 ブレアの職業は戦士なのだが、ジョブチェンジしたら無双できてってことは、もしかするとブレアのやつ、これから戦士以外のジョブになるってことか?


 それなら、今は役立たずなのも納得できる。

 あいつが無双するのは、ジョブチェンジした後。その前の段階なら、無双できないのは当然だ。

 そうか、そういうことだったのか。


「ってことは、戦士のあいつを役立たずとして追放するのは、あながち間違ってはいなかったんだな」


 なのに、俺はまんまとざまぁされてしまうわけか。

 まあ、前世の記憶が戻る前の俺は、かなり横柄な態度をとっていたからな。きっとジョブチェンジしたブレアと再会しても、見下してムカつく言動をとり続けていたんだろう。あの手の話の定番だ。


 だが、そうとわかれば話は早い。

 ジョブチェンジして無双できるようになったのなら、パーティーにいるうちにジョブチェンジすればいいんだ。


 よし。早速、ブレアのやつに勧めてみるか。


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