第4話 新しいスタート。なんだけど……

 俺が前世の記憶を取り戻し、ブレアを追放したらザマァされると知ってから、三日が経った。


 あれから本当に大変だった。

 特別待遇でなんとかブレアを引き止めようとする俺に、他のメンバーは猛反発。

 散々揉めた挙句、とりあえずブレアは、今までの給料のままパーティーに残ることが決定。


 ついでに、パーティーの事務所兼俺の家として内見していた物件はその場で借り上げ、二人で一緒に住むことになった。

 その結果がこれだ。


「おはようございます、ブレア様。朝食の支度ができております」


 朝、ブレアが寝ている部屋に行き、執事のごとく跪く。


 他のパーティーの奴らが反発しているせいで、いつブレアが怒って出ていくかわからないからな。

 こういうところで点数を稼いでおかないとな。


「あ、アレックスさん。そのブレア様ってのやめてください。それに、その、勝手に部屋に入ってくるのは……」

「ははっ、それは失礼しました。どうか、平にご容赦を!」

「だから、そういうのもいいですって! だいたい、何なんですかそのキャラ!」


 うーむ。どうやら、俺のなんちゃって執事キャラはあまりウケがよくないようだ。

 う〜ん、難しい。


「とりあえず、僕はこれから着替えるので、部屋から出ていってもらっていいですか?」

「なんだ? 別に男同士だし、そんなもの気にしなくていいじゃないか」

「ど、同性でも、恥ずかしいものはあるんです。ほ、ほら。僕、華奢なので……」


 なるほど。確かにブレアは、男にしては線が細く、非常に華奢な体型だ。それで戦士が務まるのかと思ったこともあったが、本人も気にしてたんだな。

 コンプレックスを刺激するのはよくない。ということで、俺は一旦部屋から出ていき、ブレアが着替え終わった後、二人で一緒に朝食をとる。


 ブレアのご機嫌をとるために、ちょっと豪華なメニューにしてみたぞ。


「あの、アレックスさん。僕、本当にこんな高待遇でいいんですか? もちろん、パーティーにいられるのは嬉しいですけど、ここまでしてもらうようなこと、やってませんよ。それに、お休みまでもらっていますし」

「そういうのは気にするな。パーティーメンバーの体調管理はリーダーの仕事だし、良いパフォーマンスを発揮するには、時に休むのだって必要だ。最近お前が上手くいってなかったのは、疲れが溜まっていたせいもあるんじゃないか」


 こういうサービスや福利厚生でこれからもこのパーティーにいてくれるなら、安いものだ。


 あと休みに関しては、ブレアと他のメンバーは、少しの間距離を置いたほうがいいかもしれないと思ったからってのもある。


 追放するべきかどうかで揉めた後、すぐに同じメンバーで行動するってのも、やりにくいものだろう。


 というわけで、今日もブレアには休んでもらって、俺たち他のメンバーは、その間もフィールドでモンスターを狩ったりダンジョンを散策したりすることになっていた。

 さらにあとひとつ。これには、大きな作戦も盛り込まれていた。


「それじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい。あの、僕が必要になったら、いつでも呼んでくださいね。そんな機会、無いかもしれませんけど」

「いいや、案外あるかもしれないぞ。そうなったら、ぜひ協力してくれ」


 ブレアの言葉に、俺は内心ほくそ笑む。

 ブレアがいないということは、それだけ戦力がダウンするってことだ。

 もちろんマリアーノたち他のパーティーメンバーは、いてもいなくても大して変わらないと、もしくは、いても足でまといだと思っていることだろう。


 たが、俺は知っている。

 こういう時、役立たずだと思っていたアイツがいなくなった途端大苦戦っていうのが、パーティー追放もののお約束なのだ。


 待ってろよブレア。他のメンバーが、お前の重要性に気づく時も近い。


 と、思ったのだが……


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