第3話 君は特別待遇だ
「ほ、本当ですか?」
突然の追放撤回に、目を丸くするブレア。
ドッキリなんて、我ながら苦しい言い訳だとは思ったが、どうやらそれなりに効果はあったみたいだ。
よし。このまま乗り切るぞ。
「当たり前だろ。君みたいに有能で頼りになるやつ、本当にクビにするわけないじゃないか。いつまでもこのパーティーにいてくれ」
「ぐす……よ、よかった。これからも、よろしくお願いします」
よっしゃ、セーフセーフ!
これでブレアのパーティー追放はなし。俺が後々ざまぁされることもなくなったってわけだ。
めでたしめでたし。
だが、これに納得できない奴がいた。マリアーノだ。
「はぁっ? アレックス、あんた何言ってるのよ。本当にクビにするんでしょ。有能で頼りになるって、こんなのただのお荷物じゃない」
バカっ! 何言ってんだ!
ああ、ブレアがまた泣きそうになってる。せっかく危機が去ったってのに、これじゃまた元通りだ。
「マリアーノ。お前は追放だ!」
「えぇっ! なんで私が!?」
「やかましい! ブレアを悪く言うやつは、俺が許さん!」
ざまぁされるなら、お前一人でされてくれ。
そんなことより、ブレアの心のケアをしなければ。
「マリアーノのやつ、何言ってるんだろうな。あんなの嘘だから、気にするな」
「で、でもマリアーノさんの言う通り、僕ってお荷物になってますよね。敵は倒さないし一人だけピンチになるし。やっぱり僕、このパーティーには必要ないのかも」
ああ、もう! すっかり落ち込んだじゃないか!
このままだと、自らパーティーを抜けるなんて言い出しかねない。なんとかして引き止めなければ。
「きゅ……給料を二倍払おう!」
「へっ?」
「お荷物なんてとんでもない。二倍の給料を払ってもいいくらい、お前は必要な人材なんだ。だから頼む。これからもこのパーティーにいてくれ」
「ほ、本当ですか? でも、ただでさえこの家の家賃の支払いで大変なんじゃ?」
「そんなものいいから。いや、待てよ……」
給料も家賃も、残念ながら俺が身銭を切るしかない。
そう思ったが、なんとかする方法があるかもしれん。
「お前、さっき言ってたよな。俺と一緒にこの家に住むって。それでいこう。もちろん、家事を全部押し付けたりはしないぞ。というか、俺が全部やる。お前は、タダで家政婦が雇えるようなようなもんだ。どうだ?」
面倒だが、こういうところで待遇をよくして、なんとか今後もうちのパーティーにいてもらわないと。
だがこれには、ガストンとエレナも黙っちゃいなかった。
「待て。いくらなんでもそれはやりすぎだろう。どうしてそこまで特別扱いするんだ」
「そうですよ。それに、その……残念ですが、このパーティーでブレアさんが力不足なのは事実だと思います」
ぐぐ……確かに言ってることは正論だ。
ブレアは現状、このパーティーで何の役にも立ってないように見えるし、それでこの待遇はおかしな話。
しかーし、先の展開を知る俺にとってはそんなもの関係ない。
とにかく、追放からのざまぁを回避しなきゃいけないんだ。
「うるさーい! 勇者である俺が決めたんだ。ブレアは絶対にこのパーティーにいさせる! 文句あるやつはいるか!」
「「「ある!!!」」」
声高らかに宣言する俺に、猛反対する、マリアーノ、ガストン、エレナ。
そんな俺たちのやり取りを見ながら、ブレアはどうすればいいかわからず、一人オロオロしているのだった。
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