第2話 ヤバい! このままじゃザマァされる!

 前世の俺は、こことは違う世界に住んでいて、そこではあるマンガを読んでいた。


 そのマンガのタイトルは、『勇者パーティーを追放されたけどジョブチェンジしたら無双できてザマァした件』。


 俺が読んでいた時はまだ連載開始したばかりで話は序盤だったが、タイトルでストーリーを説明していたから、それからどうなるかはだいたいわかる。


 パーティーを追放された奴が実は凄くて、なんやかんやで大成功。一方そいつが抜けたパーティーは、うんぬんかんぬんで酷い目にあうっていう、異世界ものの定番だ。


 そのマンガの主人公の名前が、ブレア。パーティーを追放する勇者の名前が、アレックス。


 そこまで思い出した時、全てを悟った。

 俺は、前世で見たマンガの世界に転生しているんだ!









「アレックスさん? あの、アレックスさん……?」


 呆然としている俺に、ブレアが不安そうに声をかける。

 いかんいかん。急に衝撃の事実が判明したものだから、思わず思考停止してしまった。


「ま、まあ、前世がなんであろうと、今の俺には関係ないよな。転生したってことは前世の俺は何かの理由で死んだんだろうが、その辺は詳しく覚えてないし、ここでの勇者生活には満足してるから、別にどうでもいいか」

「あの……何を言ってるんですか?」


 不思議そうな顔をするブレアだが、前世なんて言ったところで信じてもらえるわけがない。


 それよりもだ。


「おいブレア。そんなことより、お前いつまでここにいるんだ。目障りだからさっさと出ていけ」

「うぅ……ぐすっ。ほ、本当に、出ていかなきゃダメですか?」


 泣きそうになるブレアだが、俺はそんなもので意見を変えたりはしない。

 というか、このやり取りも疲れてきた。


「しつこいぞ。これ以上ごねるなら、力ずくで叩き出してやろうか!」

「ひぃっ!」


 脅かしてやろうと、剣に手をかける俺。

 だが、その時気づいた。


(ん? 待てよ……?)


 ここは、『勇者パーティーを追放されたけどジョブチェンジしたら無双できてザマァした件』の世界。

 そして俺は、主人公ブレアをパーティーから追放する勇者。


 ってことは何か? このままこいつを追放したら、俺はザマァされるってことか!?


 ま、まずい。それは、非常にまずい。

 どういう経緯でこいつが無双するかなんて知らないが、俺が酷い目にあうなんてごめんだ。


「な、な〜んちゃって。全部ドッキリでした〜」


 これで、パーティー追放は無し。

 ……ってことにしたいんだけど、できるかな?

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