役立たずをパーティー追放しようとしたら前世の記憶を思い出し、俺がザマァされる勇者だったとわかったんだがどうしよう?
無月兄
第1話 パーティー追放! と、思ったら?
「ブレアよ。お前をパーティーから追放する! 要はクビだ、クビ!」
「えぇっ! そんな!?」
俺の言葉に愕然とする、戦士ブレア。
戦士と言っても、非常に小柄でヒョロヒョロで、涙目になるその姿は弱々しい。
だがいくら泣こうと同情はしないし、クビが覆ることはない。
なぜならこいつのクビは、この俺、勇者アレックス様が決めたことだからだ。
「どうして僕がパーティー追放されるんですか!? わけを教えてください!」
はぁ。うるさいヤツだ。
「この物件の家賃が、思ったよりかかるからだよ」
勇者パーティーをやってる俺たちは、旅の途中で拠点となる街を見つけ、少しの間それぞれの家や事務所を借り、毎日出勤してくるというスタイルをとっていた。
今回、俺たちが見つけ、内見をしているのは、俺の家とパーティーの事務所の両方を兼ね備えていて、しかも修行もできる道場がついているという、なかなかの良物件だ。
ただし、その分家賃がちと高い。
「家賃をなんとかするには、その分他で切り詰めなきゃいけない。だから、お前を追放して給料をカットするんだ。いい考えだろ」
「そんな無茶な! だいたい、どうしてそれでクビになるのが僕なんですか!」
「お前、そこまで説明しなきゃならないのか?」
思わずため息が出るが、呆れているのは俺だけじゃない。
その証拠に、そばでこのやり取りを見ていた魔術師のマリアーノが、口を出してきた。
「あんた、そんなこともわからないの? そんなのあんたが役立たず。このパーティーのお荷物だからに決まってるじゃない」
そうなのだ。
勇者である俺、アレックス。魔術師マリアーノ。そこにいるタンクのガストンと、僧侶のエレナ。そしてこいつ、戦士ブレア。
この五人でパーティーを組み、様々な戦いをくぐり抜けてきたのだが、このブレアというやつは、本当に役に立たなかった。
そもそもこいつ、小柄で華奢な体格に、どっちかって言うと可愛い系の顔っていう、見た目からしてもとても強そうじゃない。
だから、最初パーティーに入れるかどうかも微妙だったんだよな。
「いいか、ブレア。お前、パーティーに入る時言ったよな。一生懸命頑張ります。決して足でまといにはなりませんって」
「はい。だから僕、一生懸命頑張って…」
「足、引っ張ってるよな。戦士だってのに大した攻撃力もなくて、ほとんど敵を倒せない。それどころか、いつも一人だけピンチになって、みんなフォローするのが大変なんだぞ」
「それは……で、でも、僕がいなければみんな困ることも……」
「ない! ハッキリ言って、いない方がマシなんだよ! そうだろ、お前たち」
他のメンバーに目を向けると、マリアーノはそうだそうだと叫び、ガストンとエレナも小さく頷いた。
「頑張っているのは認めるが、実力不足なのは確かだ」
「ブレアくんには、もっと向いているものがあるんじゃないでしょうか」
この二人はオブラートに包んじゃいるが、ブレアがこのパーティーに不要だってのは、満場一致の意見なんだよな。
「これでわかっただろ。お前は役立たずなんだよ。クビになるのも当然だろ」
「そんな! お願いです。どうか、僕をこのパーティーにいさせてください! そうだ。じゃあ、僕は自分の部屋を借りずに、アレックスさんと一緒にこの部屋に住むのはどうですか? もちろんある程度の家賃は払いますし、掃除や洗濯だってやります」
なるほど。確かにこの物件なら、俺以外に一人くらい住んでも特に問題はなさそうだ。
掃除や洗濯といった家事をやらせたら、それなりに便利かもしれん。
けどなぁ……
「やっぱりやめた。俺は、プライベートは大事にしたいんだ。だから、お前たちとはパーティーとはいえ、別々に部屋を借りて生活しているんだ。そんな空間に、他のやつを住まわせるなんてゴメンだ」
「そんな!」
「まあ、可愛い彼女や結婚相手だったら、一緒に住んでここを愛の巣にするってのもありだけどな。お前じゃそんなの無理だろうから、やっぱりパーティー追放だ! さっさと荷物をまとめて出ていくんだな!」
「ふぇぇぇぇん!」
泣きついてくるが、そんなの知らん。これ以上、お前なんぞがこの勇者様の手を焼かせるな。
そう思ったその時だった。
(待てよ。このシチュエーション、どこかで見たことあるぞ? )
不意に、頭の中で奇妙な記憶が蘇ってきた。
それは、遠い昔の記憶。いや、俺がこの世界に生まれてくる前の、いわゆる前世の記憶ってやつだった。
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