ダンジョン見ていきませんか
亜未田久志
住宅(ダンジョン)の内見
迷宮攻略の一助に!
ダンジョンの内部見学できます!
の広告が出ていた。
冒険者たちはこぞって応募を出し。
倍率は跳ね上がった。
そして抽選の末。
俺が選ばれた。
「いやぁよくいらっしゃいました! 迷宮は初めてですか?」
「ええまあ」
「それはそれは! きっと気に入ると思いますよ!」
(気に入る……?)
訝しげにその不動産屋の男を見やる。
駆け出しの冒険者の俺にとってダンジョン攻略は夢のまた夢だ。
それが一足飛びに叶えられると思って応募したのだがどうにも胡散臭い。
「このダンジョンは99階建てになっておりまして。地下に行けばいくほど難易度が上がっていく仕様になっております~」
「きゅうじゅうきゅう!?」
「まずここがドラゴン部屋ですねぇ」
扉を開いた先には真っ赤な鱗に身を包んだ竜がこちらを睨んでいた。
口からは火が漏れ出ている。
「あ、あぶね」
不動産屋の男が咄嗟に扉を閉める。
その後、ゴオオオオオ! という音がして扉の隙間から火が噴き出た。
「よく間に合いましたね……」
「ブレス準備見てから回避余裕でした」
不動産屋の男は冷や汗を掻いていた。明らかに余裕はなかった。
「では次の部屋に――」
「ちょっと待ってください」
「はい?」
「やっぱり俺一人じゃダンジョン攻略は無理って言うか。パーティのみんなと相談させてほしいというか」
すると少しだけ不動産屋の男は考え込む動作をしたあと。
「シェアハウス希望ということで?」
「違いますね」
ひどく見当違いな事を言った。
その後、男はうんうんと首を傾げるばかりだ。
「今回の契約は無しという事ですかねぇ?」
「まあ……そうなりますかね」
「それはこまりましたねぇ。今回に限り、契約者様に聖剣をプレゼントする特別プランをご用意していたのですが」
「聖剣?」
「ええ! 太古の昔、魔王と呼ばれた存在を打ち倒したとされる勇者の使っていた剣です!」
「つまり中古品じゃねぇか」
「はい」
「はいじゃないが」
不動産屋の男と俺はにらみ合う。
「どうしても契約なさらないつもりで?」
「こんな胡散臭い契約結ぶわけないだろ」
「はぁ……分かりましたよ。ただし!」
「なんだよ」
「ダンジョンはあくまで我が店の所有物です! 攻略の際は通行料諸々を払うように!」
「な――!?」
「では」
こうして通称ぼったくりダンジョンは永遠に閉ざされる事になったのだった。
ダンジョン見ていきませんか 亜未田久志 @abky-6102
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