スタンピードと、パワードスーツと、3分間
喰寝丸太
3分のうちにやらなければいけないこと
俺、タイトには三分以内にやらなければならないことがあった。
それは、モンスターのスタンピードを止めることだ。
目前には1万を超えるモンスター。
モンスターはバッタの形をしていた。
大きさは1メートルを超える。
中には3メートルを超える巨体もある。
羽は付いてはいるが、重いので飛べも跳べもしない。
不幸中の幸いだ。
後ろには守るべき街。
街には知り合いが多数住んでいる。
避難した人もいるが、大抵は間に合わなかった。
地下室のある家はそこでみんな肩を寄せ合っているだろう。
俺の現在の頼みの綱はパワードスーツ。
だが、込められた魔力は3分しか持たない。
この世界、魔法がある。
簡単な魔法で良いのなら。
【火球飛べ】だ。
全ての言語で魔法が使える。
おそらく文章解析のAIみたいなものが、世界システムに搭載されている。
法則はある。
【火球飛べ】こんな魔法だと効率がかなり悪い。
事細かく指示されたら、効率が良くなるのは何でも一緒。
仕事だって、細かい指示があればあるほどスムーズにいくという物だ。
【1メートルの火球を生成、風を使い飛ばせ】とかこんな具合に細かくしていくと良い。
そして、俺は異世界転生する前はプログラマーだった。
魔法がプログラムで行けるのなら、こんなのも行ける。
【
for i in range(0,10,1): # 10回ループ
print("【火球飛べ】")
】
この2行で10連弾火球だ。
効率の良い魔法、それが俺の強みだったんだが、押し寄せてくるモンスターは魔法無効。
物理のみがダメージになる。
パワードスーツは魔力で動いているが、攻撃は物理だ。
「パワードスーツ起動。派手にいくか。ミサイルパンチ」
片腕を突き出して構える。
腕は切り離され白煙を吐き出しながらモンスターに突撃。
そして、閃光が着弾点を包み込んだ。
くっ、1発じゃ駄目か。
スペアの腕を新たに付ける。
腕を付け加え何度も発射する。
駄目だ、モンスターの勢いは止まらない。
時間は?
あと2分か。
このまま格闘戦になると2分なんかあっという間だ。
死ぬのか。
俺が?
俺の最後はこんな感じか。
モンスターとの格闘戦に入った。
パワードスーツで手あたり次第殴り飛ばす。
だが、数は一向に減らない。
残りあと1分。
魔道具のタイマーが秒読みを始めた。
「10、9」
くそっ、こんな所で死ねるか。
速効で魔法構築。
【
while 1: # 無限ループ
print("【ランダム効果】")
】
パワードスーツが踊り出して、モンスターも踊る。
隕石が落下。
モンスターが笑いだする
毛虫が湧いた。
銅貨が降る。
何も起こらない。
モンスターがオナラした。
「2、1」
パワードスーツのパンチはモンスター飛ばし、そのモンスターは別のモンスターを殺す。
そして連鎖は続いて行き、モンスターを全滅させた。
全滅のランダム効果を引けたらしい。
勝因は無限ガチャ。
我ながら、良く数秒でこんなのを作れたものだ。
効果ランダムは魔法だけど、パンチの一撃は物理で、全滅するという事項は確率だ。
確率ではあり得る。
「自爆シーケンス入ります」
3分経つと自爆するように作ってあったる
ふぅ、あっ、魔法止めるの忘れてた。
全裸の女の子が現れた。
鼻血を盛大に吹き出し、パワードスーツの配線がショートした。
コックピットに煙が立ち込める。
俺は急いで外に出た。
全裸の女の子は全裸のおっさんに変わってた。
魔法を止める。
なんだかな。
興奮が一気に萎えた。
勝った喜びが、半分以下に減ったように思う。
普通、ここは女の子と抱き合ってキスする場面だろ。
おっさん、何かを期待するような目で見るな。
服と金だろ、持ってけよ。
スタンピードと、パワードスーツと、3分間 喰寝丸太 @455834
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