生命の始まり  生命の終点

菅原 高知

水族館

 とある家族が水族館にやって来ました。


「わーい。楽しみ!」


 ヒトの子がお父さんとお母さんと手を繋ぎながら飛び跳ねています。


 水族館に入ると、まずあったのは小さな水槽でした。


「ビーズプランクトンだって。小さいねー」


 ヒトの子は水槽に顔を近付けます。

 そこには色とりどりのビーズの破片がプカプカと漂っていました。


「本当だね。何々……前はこれくらい小さな生き物が海にいたんだって」

 

 お父さんが説明看板を見て言いました。


「嘘だー。こんな小さな生き物いるわけないよ!」


 ヒトの子が言いました。


「そうだね。お父さんも見たことないなぁ」


 次にあったのは、ふれあい広場にでした。


「粗大貝だってー。硬ーい」

  

 ヒトの子がふれあい広場にいたレンジ貝と冷蔵庫貝を恐る恐る触ってはしゃいでいます。


「本当ね。えっと……昔の貝はもっと小さくて美味しく食べられたんですって」


 お母さんが説明看板を見て言いました。


「嘘だー。だってこんなに硬いんじゃいくら小さくても食べられないよ」


 ヒトの子が歯をガジガジさせながら言いました。


「そうよね。こんなの食べたらお腹壊しちゃいそう。昔は食べ物が少なかったのかしら?」


 お母さんも首を傾げました。


 次にあったのは、ビニールクラゲの水槽でした。


「うわー。キレイ」


 暗くされた室内で、ライトアップされたビニールクラゲがプカプカと水中を漂いとてもキレイでした。


「本当だね。何々……。昔のクラゲはもっと足みたいなのが沢山あって、その足の先に毒があったんだって」


 お父さんが説明看板を見て言いました。


「えー怖い。ビニールクラゲの方がキレイでいい!


 次にあったのは大水槽でした。


「うわー! プラクジラ大きくなってる!

私が沢山ゴミ捨ててあげたからかな?」


「きっとそうだよ。良かったね」


「うんっ」


 ヒトの子が巨大水槽で優雅に泳ぐプラスチックゴミが寄せ集まって出来たクジラに感嘆の声上げました。お父さんとお母さんも嬉しそうです。


「何々……昔はこのプラクジラにそっくりなクジラって生き物がいたんだって」


 お父さんが傍にあった説明看板を見て言いました。


「嘘だ―。こんなに大きい生き物がいるわけないよー」


 ヒトの子は大声で言いました。


「ははは。本当信じられないよな」


 お父さんもクジラを見たことがありませんでした。無理もありません。クジラを含めは海の生き物は何百年も前に絶滅してしまったのですから。



「はぁー 面白かった」


 ヒトの子は大満足でした。


「お母さん喉乾いたー」


「そうね。あ、自動販売機があるわ。何か買いましょうか?」


「うん。私リンゴジュース」


「はいはい」


 ヒトの子は美味しそうにペットボトルに入ったジュースを飲みました。



「お、何か新しい展示があるみたいだよ」


 お父さんが指さしました。

 

 ソコには『海を創った生物』展と書いてありました。


「面白そうね。行ってみましょうか?」


 お母さんが言いました。


「うん! 行く!」


 ヒトの子が元気よく頷きます。


 展示されていたのは『人間』という生物でした。


 二足歩行で、頭が良く、手足が器用で、かつて地球の食物連鎖の頂点にいた生物だそうです。


「何でそんなに凄い生き物が死んじゃったのかな?」


 ヒトの子が首を傾げました。


「何々……人間は自分達で自分達の住めなくなる環境を創り出したんだって。ソレが今見てきたビニールクラゲやプラクジラなんだってさ」


 お父さんが説明看板を見て言いました。


「えーえ! じゃあプラクジラが大きくなっちゃったら私達も地球に住めなくなっちゃうの?」


 ヒトの子が驚いて声を上げました。


「そうみたいだね」


 お父さんもお母さんも驚いています。


「じゃあ、私コレからはゴミはゴミ箱に捨てるようにする。私が大人になった時に住む場所がなかったら嫌だもん」


「そうだね。お父さんたちもそうするよ」


「そうね」


 お父さんとお母さんが頷きます。


「あ、私このペットボトル捨ててくる」


 そう言うとヒトの子はさっき飲んだリンゴジュースのペットボトルを近くのゴミ箱まで捨てに行きました。

 


 




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生命の始まり  生命の終点 菅原 高知 @inging20230930

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