第30話 冷酷美少女は一緒に寝たい

 あれから風呂に入っても感情が落ち着かなかった俺は黙々と問題集を解くことにした。


 問題を解く時間はいい。雑念を忘れてひたすらに集中することができる。


 お陰で先程まであった感情は治まり今はいつも通りの平常心をキープ出来ていた。

 

 俺はふと時計を見るともう既に日付を超えていた。集中していたので全く気づかなかったな……


「よし、今日はこのくらいにして早く寝るか」


 明日も変わらず学校はある。この間のように寝不足で翌日の授業に支障が出るようなことは二度とごめんだからな。


 ベットに寝転がろうとしたその時、スマホに通知が届いた。


「ん、誰からだ?」


 もしかして彼方か? また相談に乗ってくれとかか? こんな深夜に男と通話なんたくないんだが……いや、それとももしかすると先日の件か?


 様々な思考をしながら送り相手を確認すると七瀬からのメッセージだった。


『まだ起きてる?』

 

 俺はすぐに返事を送る。


『ああ』


『良かった、今からあなたの部屋にお邪魔してもいい?』


 なん……だと?


 今から来る? この部屋に? 七瀬が?


 途端に落ち着いていた感情と強制的に忘れていた先程の光景が脳裏に再び蘇った。


 恥ずかしそうな表情。


 艶やかな長い黒髪。


 白く柔らかそうな肌。


 豊満な胸を柔らかく包む純白の下着。


 長くスラリと伸びた足。


 あの時、確かに俺は七瀬の下着姿に心を乱し、予期せぬ反応もしてしまった。


 まただ……この感情に俺の心が乱される……


 いかんな……落ち着け、平常心、平常心。落ち着けば大丈夫だ。


 自分にそう言い聞かせ俺はスマホを取り七瀬へと返信する。


『構わない』


『ありがと』


 それから数秒後、扉が開き七瀬が顔を覗かせた。


「ごめんなさい、夜遅くに」


「俺は大丈夫だ」


「勉強してたの?」


「ああ、もう少しでテストだしな」


 期末試験まであと2週間、俺は基本的に頭は悪くない方だがそれでも勉強は毎日欠かさず行う。


 そうでもしなければ机に向かう時間がどんどん減っていってしまうからな。


「……それより何故隠れてるんだ?」


 俺指摘すると七瀬は身体をビクリと震わせた。


 先程から七瀬は部屋に入ろうとせず扉のところで止まっている。


「まさかまだ下着姿なんじゃないだろうな?」


「ち、違うわよ!?」


 よほど恥ずかしかったのか七瀬は顔を真っ赤にして反論してきた。


 違うのか……てっきりそうだと思っていたが……


 じゃあ何故いつまでも入ってこないんだろうか?


「……もう寝てもいいか?」


「わ、わかったちゃんと入るから!」


 七瀬は慌てて部屋の中に入った。


 入ってきた七瀬は可愛らしいベージュ色のパジャマに身を包み両手で枕を抱えていた。


「今日……一緒に寝ない?」


 上目遣いで可愛らしくそうお願いしてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る