第20話 初めての共同作業
スーパーで食材を購入し、自宅のマンションに帰宅した俺は早速調理に取り掛かっていた。
料理はかなり好きなので疲れていてもこのくらいは苦なくこなせる。
しばらく俺が集中して料理をしていると七瀬が隣にやってきた。
「どうした?」
「私も何か手伝うわよ」
「大丈夫だ、座ってていいぞ」
今日は元々俺が食事当番の日だし、七瀬も今日のバイトでかなり疲れているだろうから休んで欲しい。
「一回あなたと一緒に料理をしてみたかったの。駄目かしら?」
「……別に駄目ではない。なら手伝ってくれるか?」
「ええ、もちろん」
彼女がそう言ってくれるならここはお言葉に甘えさせてもらおう。
一人で作るのと二人で作るのでは効率が違うのだ。
「それで私は何をすれば良いの?」
「米を研いで炊飯器にセットしてくれ。俺は肉の仕込みをしておく。」
「わかったわ、任せて」
彼女は優しく微笑み作業を開始した。
俺も再び豚肉を食べやすい大きさにカットしていく。そしてカットし終えた肉を作ったタレにしばらく漬け込む。
よし、もう少しつけたらあとは焼くだけだ。
「お米、終わったわよ」
「ありがとう、さすがだな。次は卵焼きを頼めるか?」
「私卵焼き綺麗に作るの得意だから、任せて」
かなり自信があるのかこちらにドヤ顔を向けてきた。
いつものクールな印象とは違い可愛いこともするんだな……
冷蔵庫から卵を取り出すと片手でわり、箸で素早く混ぜていく。
上手く混ざり終わった所で砂糖、醤油、出汁を加え再びよく混ぜる。
そしてといた卵をフライパンに敷き、慣れた手つきで卵を巻いていく。
本当に料理うまいな……俺も卵焼きはあまり得意じゃないんだが……
俺が作るときにはどうしても途中で破けてしまうことが多く少し不恰好な形になってしまうことがほとんどだ。
だが七瀬が作り終えた卵焼きは美しい焼き色で素晴らしい出来栄えだった。
「……すごいな」
「これくらい簡単よ」
「いや、俺だとこんなに上手くいかないんだ。」
「あら、あなたにも不得意なことがあるのね。」
「俺だって人間だからな。それくらいある」
「そうだったわね。ふふっ」
七瀬は可笑しそうに笑う。
全く俺を全て完璧にこなす完全無欠の男とおもっていたのか?
まぁ、実際そう見えるようにしているのは俺だから何も言えないが……
「なんかこうしていると夫婦みたいね」
「まぁ、実際それに近い関係だしな」
「いつか子供にこうしてあなたと一緒に料理を作るのが楽しみね」
「……まだ早いだろ」
「早くないわ、いつか来る未来だもの」
そう言う七瀬にはどんな温かい光景が広がっているのだろうか。
俺の目にはそんな未来は映らなかった。
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