第19話 冷酷美少女と買い物

 バイトを終えた俺達はシフト終わりに貰ったコーヒーを飲みながら帰路についていた。


 今日はいつもより長かったこともあり、あたりはすでに暗くなっている。


「今日は流石に疲れたな。」


「ええ、私も」


 うちの店は幅広い年代に人気なこともあり、かなりの数のお客さんが毎日くる。


 今日はいつもより増して多くて流石に疲労感が強い。


「ねぇ、今日のご飯どうするの?」


「ん? そういえばまだ決めてなかったな……」


 いつもなら疲れている時はカップ麺か、冷凍食品、出前などで済ませるのだが流石に七瀬の前でそれをするのは俺のプライドが許さない。


 一条家の跡取りが婚約者にインスタント食品を出したなんて父さんに知られたら怒られそうだしな。


「何かリクエストとかあるか? できるだけ応えさせてもらう」


「ん〜……和食がいいかも」


「そうだな、俺もそれがいい」


 洋食もいいがやはり俺は慣れ親しんだ和食の方が好きだ。


 和食は作る人によって個性が色濃くでる。そのため美味しくなるかは全て料理人の手腕にかかっている。

 

 俺は昔から恐らく日本の中でも1、2を競うレベルの和食を食べてきたので和食は得意料理だ。


「冷蔵庫には何もなかったと思うからスーパーによってから帰るか。この時間なら割引もされてそうだ。」


「わかったわ、明日の分も買っちゃうわね」


「ああ、そうしよう」


 

 ◇



 スーパーに着くと店内はかなり賑わっていた。この時間だとお惣菜の割引待ち組が多いのだろう。


 俺も作るのが面倒なときはよく買っていた。


 一人暮らしの身にとってやはりスーパーの割引惣菜は最強だ。

 だが今回はお惣菜に用はないので俺達は食材売り場へと向かう。


「よし、このキャベツはいい感じだな。」


「すごく慣れてるわね」


「まぁな、一人暮らしになってから自炊する機会も増えたからな」


「あなたってある程度一人でできるようにしてるわね。羨ましいわ」


 それは七瀬もだと思うが……


 七瀬は学年でも上位の成績を誇り、運動神経も抜群だ。彼女こそ完璧だろう。


「七瀬の方が俺より圧倒的にすごいと思うがな」


「あなたもテストで毎回必ず10位内にははいってるじゃない。私たちの学校でそれってすごいことよ?」


 俺達の学校は名門の進学校だ。色んな所から優秀な人材が集まるためテストで上位を取るのも難しい。


 俺も父さんに毎回5位内に入れと無茶振りを言われいるが安定して取ることは未だ出来ないでいる。


「俺的にはまだまだだが、七瀬に褒められると嬉しいな」


「もっと褒めてあげてもいいわよ?」


 七瀬は自身の腿に触れながら言う。


 まるで「また膝枕して褒めてあげるわよ」と言っているようだった。


 俺の頭の中で先日の膝枕が蘇る。

 

 全く……こういうことをするのはできるだけやめてもらいたいな。


 前は耐えられたが次も耐えられる自信はない。


「……それはまたでいい。それより次の食材買いに行くぞ早くしないとなくなる」


「ふふ、照れ屋ね」


 反論するとまた揶揄われそうだったので俺は黙って顔を背けた。




 




  【あとがき】


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