第18話 七瀬家
「どうだ? 彼との婚約生活は」
玲が久しぶりに家に帰ると七瀬家当主であり、父親の七瀬凍夜がそんなことを聞いてきた。
「順調です。」
「そうか、ならよかった。苦労したのだぞ、婚約まで持っていくのに」
「そうなのですか?」
「ああ、最初はかなり渋られていたからな。それでも一条家現当主が一目見てお前を気に入ったからできたことだ。」
湊と顔合わせの前、父親の一条伸弥とは会う機会があった。
その場では自己紹介と軽い雑談や世間話などしかしなかったが玲のどこかを伸弥は気に入ったようでその後の話もスムーズに進んだ。
「相手はあの一条家の跡継ぎ、一条湊だ。絶対に結婚まで持っていけ。そうなれば我が七瀬家にも大きな利益となる。」
「はい、もとよりそのつもりです」
(やはりこの人は一条家の次期当主、一条湊としてしか彼を見ていない。)
玲は単純に湊が好きで婚約という手段を用いたが凍夜は違う。一条家のコネや、権力、富に興味があるのだ。
玲はそんな父親が嫌いだった。
「ところで彼とはどこまでいったんだ? 行為とまではいかなくとも、キスくらいはしたのか?」
高校生の娘に普通はしないような質問が飛んできた。
この人はデリカシーが無さすぎるではないかと思いつつ玲は答える。
「いいえ、まだです」
「……手は繋いだんだろうな」
「それもまだしていません」
「……」
「ですがハグはしました」
これは婚約以前にすでにしている。
すると玲の言葉を聞いた凍夜が頭をかかえた。
「わかっているか? これはお前が望んだ婚約だ。破談など許されない」
「お言葉ですがお父様、私達には私達のペースがあります。口出しは無用です。」
「ならいい……だがしっかりと関係は深めておいてくれ」
「はい、それは約束いたします」
玲は不適に微笑み、部屋をあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます