第17話 冷酷美少女は頼って欲しい

 目覚めると目の前に七瀬の大きな双丘があった。

 大きいが形もパーフェクトで、本当に七瀬は非の打ち所がない。


「よく眠れた?」


「……ああ、お陰様で疲れが取れた」


 寝させてもらったお陰で寝る前にあった目の疲れや、思考の鈍さはかなり良くなってきていた。


 だがそのせいで今になって寝る前の思考がかなり鈍っていたと実感する。 


(何故あの時の俺は容易く膝枕を了承してしまったのだろう……)


 いつもならあり得ない考えだが寝不足で思考が鈍ったせいで判断能力がなくなっていたのだろう。


「……俺はどれくらい寝ていたんだ?」


「2時間くらいよ」


「そうか、すまんな長時間負担をかけてしまって」


「いいのよ、あなたが昨日私にずっと寄り添ってくれたことに比べればこれくらい」


「いや、それとこれとは別だ。ありがとう」


 俺はただ側にいただけだが七瀬は2時間も膝枕をしてくれた。どちらが辛いかといえば後者だろう。


 俺がお礼を言うと七瀬はふふっと微笑んだ。


「あなたってすごく義理堅いのね」


「まぁな、一条家の跡継ぎとして当然だ」


「そうね、でも今度から私も頼ってね。」


「ん? 生活面で十分頼らせてもらってるが?」


「そうじゃないわ」


 彼女は首を横に振ると俺の頬に触れた。


 そして優しく言う。


「 あなた悩みとかがあっても一人で抱え込みそうだからそれを私にも背負わせてほしいの」


「……そうか」


 俺は幼い頃から強い人間に育つように言われ、一条家の次期当主として他者に絶対に弱みを見せず悩みも全て一人で抱え込んで生きてきた。


 誰にも頼らず一人でというのは少し大変だっだがそのおかげで今の俺があるので特に後悔はない。


 これからもそのつもりだ。


 七瀬を一条家関連で苦労させるわけにはいかない。


 俺にも人を思う気持ちくらいはあるのだ。


「ああ……その時は頼む」


「ええ、いつでも頼って」


 俺の嘘の返事に笑顔で返してくれる彼女を見て心が痛んだ。


 ごめん……玲。


「……さて、そろそろ起きるか」


 俺が体を起こそうとすると七瀬が軽く抑えた。


「待って、もう少しだけこうしていない?」


「俺はもう十分休んだぞ?」


「まだ2時間しか寝てないじゃない。もっと寝なきゃ駄目よ」

 

「いや俺はもう大丈夫———」


「私をもっと頼って」


「……じゃあ、あと少しだけいいか?」


「ええ、もちろんよ」


 俺は再び七瀬の腿に頭を乗せる。


 本当に何故か七瀬といると心が落ち着く。


 何故かわからないが落ち着くのだ。


 ……少しは頼らせてもらうか。


 俺はそう思いつつ瞼を閉じた。






【あとがき】


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