第16話 冷酷美少女の膝枕

「……どういう意味だ?」


 七瀬のとんでもない提案に俺は一瞬フリーズした。


「だから膝枕、してあげる」


 彼女は先程と同じように自身の膝をポンポンと叩きながら言う。


 まさか膝に寝転がれと言うのか? 


 今まで七瀬とは同棲していたとはいえそこまで触れ合うような機会はあまりなかっため俺はまだ七瀬の肌に触れるのにかなり抵抗があった。


「どうしたの?」


「……本当にいいのか? してもらって」


「さっきからそう言ってるわ、私達将来を誓い合った婚約者じゃない。今なら頭も撫でてあげるわよ?」


 七瀬の甘い誘惑が俺の理性をゆっくりと溶かしていく。

 もういいんじゃないか? 膝枕してもらっても。

 彼女もいいと言っているんだし……。

 いいか……今日くらい。

 寝不足で疲れていた俺は誘惑に打ち勝つことができず結局屈した。


「……じゃあいいか?」


「ええ、来て」


 許可を得た俺は恐る恐る七瀬の膝の上に頭を下ろした。

 七瀬の白い腿はスベスベで柔らかく、とてつもなく心地がいい。


 これは……思っていたよりかなりいいものだな。

 人生初の膝枕が超絶美少女とは……もう彼女以外の膝枕では到底満足出来そうにない。


「どう、私の腿は?」


「ああ……すごく癒される」


「ふふ、それはよかったわ」


 七瀬は満足そうに微笑み俺の髪に触れる。

 彼女の白く細い手が俺の髪を慈しむような優しい手つきで撫でていく。

 

 個人的にこれがかなり心地よく、いつまでもこうして撫でてもらいたい。


「気持ちよさそうね、犬みたい」


「……誰が犬だ、失礼だな」


「猫の方がいい?」


「そういう意味じゃないんだが……」


「ふふっ、いつもはかっこいいあなたが今は私の腿の上で子供みたいに……なんだかとってもいい気分ね」


「……まぁいい」


 子供みたいというのが少し納得いかないがまぁいいだろう。


 俺は目を閉じ再び膝枕を堪能する。


 これまで様々な幸福を感じてきたがこれが一番幸せかもしれない。


「ねぇ、さっきからなんでこっち見てくれないの?」


「……目に毒すぎるからだな」


「どういうこと?」


 七瀬は意味がわからないのか不思議そうな表情を浮かべている。


 先程寝転がった時は上を向いていたのだが今俺は横を向いて寝ていた。


 理由は言うまでもなく七瀬の立派な双丘で視界が埋め尽くされ、とても俺の理性が保てそうにないと思ったからである。


 流石に本人にはいえないけどな。

 

 親しき仲にも礼儀あり。俺はこの婚約関係を少しでも良いものにするために常に紳士でありたいのだ。


 まぁ、欲望に負けて膝枕をしてもらってる時点で紳士とは呼べないかもしれんが。


「こっち向くの嫌なの私の胸が見えるから?」


「……わかってたのか」


「前に言ったでしょ女の子は男子の視線に敏感なのよ。」


「すまん、七瀬をそんな目で見たくはなかったんだが」


「いいのよ、男の子はそういうものだもの。それにあなたも私で欲情してくれるってわかったから」

 

 反論したいが事実少しだけそういう感情を抱いてしまったのは事実だしな。この状況でそうならない男の方が珍しいだろう。

 

「……眠いの?」


「ああ……そろそろ……限界」


 髪を撫でられ、俺の眠気は限界状態だった。


「無理しないで、もう寝て」


「ありがとう……」


 彼女の優しさに温かみを感じながら俺は目を閉じた。




【あとがき】


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