第14話 冷酷美少女は側にいて欲しい
しばらく彼女に寄り添われながら1時間ほど経ち、そろそろ寝る時間だろうと七瀬に声をかけた。
「七瀬、そろそろ寝た方がいいぞ」
「……」
「……七瀬?」
応答がないので顔を傘覗き込んでみると目を閉じ、気持ちよさそうに眠っていた。
「まじか……」
これは完全に寝てしまっているな……。
安心しきった表情で眠る彼女はあまりにも無防備で見ているこちらにとってはとてつもなく落ち着かない。
(でもよかったな、同棲していて)
もし俺と七瀬が別々に住んでいたら七瀬の親に連絡して家に送り届けてもらうか、なんとか起こして家まで送って行くしかないが同棲ならそんな面倒もない。ここで朝を明かしても問題はない。
まぁ、だからといってここにおいて行くわけにもいかないけどな。
これから七瀬を部屋のベットに寝かせてあげる必要がある。そのために彼女を移動させなければならないが起こして歩いてもらうのはこの熟睡具合からして無理そうだ。となればあとは必然的に一つしか残されていない。
「……仕方ない、やるか。」
俺は七瀬を支えながらゆっくりとソファを立ち七瀬を横にさせた。
彼女は相変わらずぐっすりと寝たままだ。
「少し触るぞ」
寝てるとはいえ一応、一言断りをいれてから彼女の背中と足を下から支え、持ち上げた。
……軽いな。
彼女の体は小さな子供のようにとても軽かった。
きちんと食べているのか? まぁ七瀬のことだからそこら辺はしっかりと管理しているだろうが。
俺は七瀬を抱き、リビングを出て彼女の部屋の扉をなんとか開け、優しくベットに寝かしつけた。
幸い彼女は起きることはなくぐっすり眠っている。
(よかった、起きてない。)
どうやら無事に運び出せたようだ。
それにしても七瀬の寝顔を見ていると微笑ましくなるな。
七瀬の寝顔を観察していると先程運んだ時にずれたのか彼女の胸元が少し開いているのがわかった。
大きな二つの双丘が見え、慌てて目線を逸らした。
これは刺激が強すぎる……!!
あまり七瀬を見ないようにしながら掛け布団を掛けた。
「よし、これで大丈夫だ。」
俺があれを直すわけにはいかないしな。あとは彼女が起きた時に自分で直すだろう。もう俺の役目は終了だ。
最後に七瀬の寝顔を見てから静かに言う。
「おやすみ、七瀬。」
そのまま部屋を後にしようとした時袖をギュッと掴まれた。
振り返ると目を瞑ったままの七瀬が弱々しい力で袖を摘んでいる。
「……ないで」
「七瀬、起きたのか?」
そう思ったがどうやら今のは寝言だったようだ。
再び部屋を出ようとすると先程よりはっきりとした言葉が聞こえてきた。
「行か……ない……で……」
「……」
一体なんの夢を見ているんだろうか……こう言われては放っておけない。
引き返し、床に腰を下ろす。
そして袖を摘む彼女の手を握り、優しく呟く。
「行かない、どこにも行かないから大丈夫だ。だから安心して寝ろ」
俺の言葉に満足したのか彼女は微笑みを見せ再び幸せそうな表情を浮かべた。
今日はもう寝たいんだが……これは離れされそうにないな。仕方ない今日はここで夜を明かすか。
結局あまり眠れず、ずっと七瀬の寝顔を眺めていた。
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