第12話 冷酷美少女は見てほしい

「よし、いい感じだ」


 学校から帰ってきた俺は晩御飯の準備をしていた。


 俺の料理は七瀬の料理には到底敵わないがそれでも中々の腕前を持っていると自負している。


 実際今作った料理もいい感じだった。


「そろそろ七瀬も出てくるか」


 七瀬は帰ってくるなり真っ先に風呂へと向かっていた。


 今日のテニスの試合でたくさん動いたからだそうだ。


(全然匂いなんてしなかったのにな)


 むしろ彼女からは普段と同じいい匂いがしたた。だがこれに関しては男の俺がとやかく言うのは間違っているだろう。女性には女性の世界がある。


「お待たせ、今出たわ」


 七瀬の声がしたので振り向くとタオルだけを身にまとった彼女が立っていた。


 普段から美しい彼女の黒髪はお風呂上がりだからかサラサラで、白く美しい肌は少し朱色になっているてなんとも魅力的な姿だ。


「……」


「どうしたの?」


「いや、なんでもない。飯、もう出来るぞ」


 ここで反応しては七瀬の思うつぼだ。冷静に……そうこういう時こそ得意のポーカーフェイスの出番だ。


 全く、何故七瀬はこんなにもアタックしてくるんだか。


 俺が特に気にしない様子に七瀬がむっと頬を膨らませた。


「むぅ……なんで無反応なの?」

 

「……普段から俺は冷静だからな」


 嘘だ。


 正直この時点で少し理性がやられそうにうなっている。


「でもさっきから少しチラ見してるじゃない。そんなに気になる?」


「……してない」


「女の子は男子の視線に敏感なのよ?」


「……興味……ない」


「そろそろ自慢のポーカーフェイスが途切れてきたわね」


「うっ……」


 だがそう言う七瀬もやはり見られて恥ずかしくなってきたのか顔が赤くなっていた。


 やっぱ恥ずかしいんだな。


 まぁ、普段こんな格好しないから当然か。


 七瀬は基本的に露出する服を好まない。だから学校でも常にタイツを履いている。


 そんな七瀬がここまで頑張って自分をアピールしているところを見ると全く反応しないのもなんだか申し訳なくなってきた。


 ……少しだけ反応するか。


「……すごく魅力的だと思うぞ」


「え? 今なんて?」


「……すごく綺麗だ」


 俺が真正面から目を見てはっきり言うと、ここまで開き直るとは思っていなかったのか七瀬はポカンと呆然としていた。


 無反応だと確かに気まずいな……


先ほどの七瀬の気持ちがわかった気がする。


「たが、いつまでもその格好だと風邪を引くぞ。早く着替えた方がいい」


「ふっふふふ、ようやく認めたわね私に興奮したって」


「誰が興奮したと言った、俺は綺麗だと言っただけだ。あとこれはもうやめてくれ、次は耐え切れるか危うい。」


 というか絶対に次されたら耐えられない。理性が壊れ、俺は獣と化してしまうだろう。

 

「それが私の目的なんだし問題ないじゃない」


「お、おい!」


「ふふ、冗談よ。色んなこと試したいもの。」


 七瀬は満足そうに微笑み着替えるために戻って行った。


 一体何を試すと言うのだろうか……次も耐えられる……よな?


 そう不安に思いつつも俺は晩御飯の準備を続けた。



 

 



 

 

 



 

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