第9話 冷酷美少女の手料理
「……やってしまった」
俺は自分の部屋のベットに蹲りながら七瀬にしてしまったことを猛烈に後悔していた。
咄嗟にあんなことを言って押し倒すなんてただの変態じゃないか……
ああ……やらかしたぁ……
どうも七瀬といるといつものように冷静を保てなくなる。いつも彼女は俺の心を惑わすのだ。
ふと時計を見ると時刻は7時。結構な時間蹲ってしまっていたようだ。
……そろそろ晩御飯作らなきゃな。
俺はそう思いベットから起き上がり、陰鬱な気持ちでリビングへと向かう。
リビングの扉を開けるとなんとも食欲をそそる匂いがした。
ん? なんだ……この匂いは……?
俺がキッチンの方へと目を向けるとそこには家庭的なエプロンを身につけた七瀬がせっせっと料理を作っていた。
「……晩御飯作ってくれてるのか?」
「ええ、あなたに私の料理を食べて欲しくって」
「俺も手伝う」
「ありがと、でも大丈夫よ。もう少しで出来上がるから。あなたは座って待ってて」
俺は言われた通り席につき、料理をする七瀬を見つめる。
……世の結婚している男はこんな気持ちなのか。
美しい黒髪をポニーテールにまとめ、エプロンをつける七瀬は綺麗だった。
しばらくすると俺の前に見事な和食が並べられた。白米、味噌汁、鯖の味噌煮、しらすとほうれん草の胡麻和えとかなり豪華で食欲が湧いてくる。
「料理上手なんだな」
「まぁ、人並みだけどね」
「いや、そんなことない。すごく美味しそうだ。」
こんな立派な料理はそう簡単に作れるものじゃない。これは彼女の努力の賜物なのだろう。
すると七瀬が可笑しそうに笑った。
「ふふ、あなたが褒めるなんて珍しいわね」
「実際すごいことだしな。もっと誇るべきだ。」
「ありがと。さ、冷めないうちに食べましょ」
俺達は両手を合わせ「いただきます」と言って橋を取った。
味噌汁を手に取り、一口飲む。
シンプルな味噌汁だが出汁の取り方が違うのか普通の味噌汁より出汁の旨みが繊細だ。
鯖の味噌煮もよく味が染み込んでいて身もすごく柔らかい。どうやったらこんなふうに出来上がるんだろうか?
「美味すぎる」
「そんなに?」
「ああ、最高だ。」
「それはよかった、あなたに気に入って貰えて」
俺が食べる姿を見つめる彼女はとても幸せそうだった。
俺はあっという間に全ての料理を完食した。
「ご馳走様でした、本当にいい晩御飯だった。」
「お粗末さまでした、良ければ毎日作るわよ?」
「いや、それでは七瀬に負担がかかりすぎる。料理は当番制にしよう」
流石に毎日学校から帰ってきて二人分作るとなるとかなりの重労働だ。良好な婚約関係を続けるためにも彼女にばかり負担をかけてはいけない。
「あなた料理なんてできるの?」
「七瀬には負けるができるぞ。意外か?」
「ちょっとね」
「まぁ、一応美味しいから安心してくれ。」
「それは楽しみね」
七瀬は楽しそうに笑う。
「俺もつぎに七瀬の料理が食べられる日が楽しみだ。」
「ええ、楽しみにしてて。すごく美味しいの作るから」
二人で囲んだ食卓はとても幸せだった。
【あとがき】
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