第4話 冷酷美少女は付き合ってほしい
「で、何故あんなことをした?」
椅子に座らせ問い詰めると七瀬は反省している様子は見せず、出したコーヒーを優雅に飲んでいた。
こいつ……さっきのこと全然反省してないな。
まぁあいつの要望に応えてしまった俺も俺だが。
あのハグは俺にとっても心地よく出来ればずっとこのままでいたいなどと少し思っている自分がいた。
「それは私があなたを好きだからに決まってるじゃない」
「……わからないな。何故俺みたいな人間を好きになるんだ……俺は七瀬が思っているほどいい人間じゃないぞ。」
「でも私を助けてくれたじゃない。あの時のあなたはとてもかっこよかったわ。」
「……」
普段俺は面倒事には極力関わらないようしているがあの時だけは自分から関わりに行ってしまった。
自分でもよくわからないが……多分知り合いが困っているのを見捨てるのは気分が悪かったのだろう。
全く、今思えばらしくない行動だったな。
「それでどう? 私と付き合わない?」
「断る。というか性格変わりすぎじゃないか? 冷酷姫様はどこに行った?」
「あなたといると少し性格が柔らかくなるのかもしれないわね」
「……気のせいだろう」
こいつ俺を口説きにきているのか? そのくらいの言葉選びだ。
「というか七瀬も誰かと易々と付き合っちゃ駄目なんじゃないのか?」
「ええ、私も結婚相手は親に決められるわ。全く迷惑よね」
七瀬の家は古くから続く名家であるためその令嬢である彼女もどこかの名家の男と結婚させられるのだろう。
「あなたはまだ婚約者は決まってないの?」
「ああ、決まってない。」
「私もまだ決まってないの。」
「? そうなのか……早く見つかるといいな。」
最も俺は婚約者についてはあまり興味がない。どうせ好きでもない女と結婚させられるわけだし、後継を残してくれればあとはどうでもいい。
他人から見たら薄情と思われるかもしれないがこれが名家に生まれたものの運命だ。そのせいで俺の両親もあまり仲が良くない。
「あなたの家はそういうの厳しそうね。私は兄が家を継ぐけど」
「ああ、妹は家を継ぐ気がこれっぽっちもないからな。跡継ぎは俺だ。」
「お互い大変ね」
「そうだな」
七瀬とこうして話していると心がすごく落ち着いた。恐らく同じような境遇のやつと愚痴を言い合えて心がスッキリしたのだろう。
婚約者が七瀬のようなやつなら少しは仲良くできるかもな。
「じゃあ確認したいことも確認できたし、私帰るわ。」
「わかった、家まで送ろう。」
「大丈夫よ、迎えを呼ぶから。今日は朝楽しかったわ、ありがと。」
「俺も楽しかった。ありがとう。」
「じゃあまた明日ね」
「ああ。」
彼女が扉を開け出ようとした時その足がピタリと止まった。
そしてこちらに再び振り向く。
「ねぇ」
「なんだ?」
「あなたのこと、湊って呼んでもいい?」
「別にいいぞ、それくらい」
俺はこの名前があまり好きではないが彼女が呼びたいというのなら好きにすればいいだろう。
「ありがと、じゃまた明日ね、湊。」
「ああ、また明日。」
彼女は満足そうに微笑み、去っていった。
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