第6話 愛は人を
次の日、ハナはミト君を探しました。村の外れにミト君はいました。土を掘っていました。傍らには糸が絡まった蝉がいました。
「死んだの?」
「寿命だよ。」
「貴方がいたぶったから。」
「それも含めて、寿命だよ。さて、僕に難の用だい?」
「神様はあなたね?」
「すごいね。どうしてわかった?」
「貴方がこの村で一番難しいことを言うから。」
「それだけで?すごい、君変わってるね。」
「ねえ、お願い。」
「何だい?」
「愛が人を殺さないようにして。」
「おかしなことを言うね。愛は人を生かしも殺しもしないよ。」
「嘘よ。ルウさんは死んだ。」
「僕は頼まれただけだよ。僕を拾った人に。戦いを終わらせたい。人を殺す前に殺したい人が死ぬようにしてって。戦いに疲れたんだろうね。」
「貴方のパパのこと?」
「パパ?まあそうだね。」
「そのパパも死んだじゃない。」
「頼まれたことをしただけだよ。」
「ほら、その感じ!貴方、人じゃないみたい。」
「なるほど。」
「だから、お願い。そのお願いというものを止めて。」
「いいよ。でも君たちは本当に不思議だ。」
「何が?」
「何よりも自由に作ったはずなのに、どの生物より不自由だ。」
「どこが?」
「殺し合いをするからだよ。とても自由に作ったら君たちは同じもの同士で殺し合う。不思議でならないよ。」
ミト君はすっかり蝉を埋めていった。
「じゃあ、僕はいくよ。安心して、お願いはもうすでに叶えたから。」
「本当に?」
「ああ。」
「ありがとう。」
「君が、今日このことを“ありがとう”と言った。そのことは忘れないでね。」
そしてミト君は、あの道をまっすぐ行ってしまった。
その後、人の首が飛ぶことはなくなり、人々はまた戦いを始めた。私はすっかり大人になり、今日も襲撃を恐れながら子供を抱きかかえて眠る。
あれから、私にもわかったことがある。愛は人を生かしも殺しもするから人を生かしも殺しもしないのだ。
あの日、私は“ありがとう”と、私は言った。後悔はないが、自由もまた、ない。
愛が人を殺す村 K.night @hayashi-satoru
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★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 13話
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