第5話 愛情と憎しみは紙一重

 ある日、村で一人死にました。病気です。マリさんという、きれいなお姉さんでした。

 

 村全体でお葬式をしました。みんな泣きました。マリさんはとても親切な人でした。私も大好きでした。だけど、一人だけ怖い顔したお兄さんがいました。死んでしまった、マリさんの恋人のルウさんでした。病気だったお姉さんを必死に看病していました。


 誰もるうさんに声をかけませんでした。私はそれが不思議でした。だから、私は聞いたのです。


「ルウさん、大丈夫ですか?」


 ルウさんは私を一目見て、ぐっと何かをこらえ何も言わずに私を通り過ぎて行きました。私にはそれが不思議で仕方ありませんでした。あの人をなぜ、そのままにしているのか。壊れそうなのに、不思議でした。


 その夜、悲鳴が聞こえました。ルウさんです。驚いて私は窓を開きました。ルウさんはわめきながら家の前の通りを走り抜けていきました。


 そして、ポンっと首が飛んだのです。


 人形のように飛んだのです。


「ハナ!」


 ママが飛んできて、私に抱きつきました。


「ママ!ルウさんが!首飛んじゃったよ!」


「忘れなさい!忘れるのよ。」


「どうして?ママ、ルウさんは誰かを殺したいと思ったの?」


「そうね。」


「誰を?」


「きっと、神様を。」


「神様?」


「人をこんな風にしたのも神様しかいないもの。ああ、ハナ、どうか神様を恨むような、人を恨むようなそんな子にならないで。」


「そんなのおかしいよ。ルウさんは愛しただけでしょう。お姉さんを愛しただけでしょう?」


「ああ、ハナ。貴方にはまだわからないの。愛情と憎しみは近いところにあるのよ。」


「そんな!じゃあ愛が人を殺すように神様が仕向けたの?」


「お願いよ、ハナ。どうか、神様を恨まないで。戦いばかり続けた、きっと罰なのよ。」


 ママは私を力強く抱きしめます。そんな、愛が、大好きという気持ちが自分をいつか殺すの?


 それが、神様なの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る