【黒歴史放出祭】私と看護師さんだけの、秘密の入院生活

さんが(三可)

私と看護師さんだけの秘密の入院生活

 突然ですが、サナギになったことはありますか?


 これは20年程前に、私の身に本当に起こった実話です。これは、私と看護師さんしか知らない、妻にも隠している秘密の話。



 20年前。仕事が忙しく、毎日の睡眠時間は2・3時間ほどの生活が続いていました。


 朝は問題ないのですが、午後からは体が重くなる。それは次第に微熱となって表れましたが、それでも所詮は微熱と無理をしました。流石にヤバいと気付いた時は、39度を超えていました。

 かかりつけ医を受診するも、症状は悪化し改善せず、総合病院で検査することに。


 結果は、急性肝炎。


 体の免疫機能は低下し、臓器移植後の状態だと説明されました。

 もちろん、即入院。そして気が抜けたのか、それとも体力の限界だったのか、処置室で動けなくなった私は、そのまま車椅子に載せられ、病室へと運ばれました。

 ベッドで寝たままの生活は、トイレ以外で体を起こすことも禁止です。


 意識朦朧とした状態で、看護師さんに何か話しかけられました。それだけは分かりましたが、何かは理解出来ませんでした。


 気付けばベッドの上で横向きとなり、膝を抱えていました。そして、腰から下が涼しくなる。


 初めての経験でした。しかし、あの時の私には、ハッキリとした記憶がありません。夢なのか現実なのかさえ分からない、そんな状態です。



 入院2日目。熱は40度近くあり、下がる気配はありません。


「昨日と同じでイイですか?」


 入院初日の記憶は、ほぼありません。何かも分からずに「はい」と答えてしまいました。

 すると看護師さんはゴム手袋を嵌めます。横向きにされ膝を抱え、そしてこれが何なのかに気付きました。


 しかし、時既に遅し。ズボンを下げられ、私の中に違和感が入ってきます。


「楽になると思うんで、いつでも言ってくださいね」


 そう言って去ってゆく看護師さん。しかし、私の心はボロボロです。



 入院3日目。シフトが変わり、朝の検温に現れたのは違う看護師さん。依然として熱は高いままですが、少し安心しました。


 しかし、午後になってその看護師さんは現れたのです。ハッキリと顔は覚えていませんが、声は間違いありません。既にゴム手袋を身に付けた状態で!

 まだ20代前半でしょうか。しかし、纏った雰囲気は妖艶で、その雰囲気に飲まれた私は拒否することが出来ませんでした。




 ここまでだけの話なら、よくある話かもしれません。


 私は禁忌を犯してしまったのです。病院で体を起こすことも許されず、寝たきりの生活。

 溜まってゆくのはストレスだけではありません。溜まりに溜まったものが限界に達すれば、弾けるしかありません。


 身体中から溢れだす老廃物や汗。不快感が私の中で爆発し、サイドテーブルの上に置かれていた、ウェットティッシュで全身を拭いてしまったのです。


 腕や足は良かったのです。しかし、繊細な部分に触れた時に感じた「熱い」という感覚。これはマズいと感じましたが、もう手遅れです。

 ベッドで体を起こす事さえも禁じられた私に出来たことは、タオルにお茶を染み込ませ拭くことだけ。


 翌日からは、少しずつ痛みが出始め、じゅくじゅくとしてきます。気付けば変色し、カブトムシのサナギのようになっているではありませんか。


 もちろん、ゴム手袋をしてやってくる看護師さんに隠せるはずもありません。後ろだけでなく、前もさらけ出すことに……。


 これが私が妻にも秘密にしている、封印したい黒歴史。決して、ウェットティッシュで拭くことなかれ!

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