四角いセカイ
篠塚麒麟
四角いセカイ
僕らはいつからココにいるのだろう。
傍らですやすやと眠る彼女の顔をそっと覗き込む。起きる様子はない。
僕は小さな足でトコトコと近くを歩き回る。
すると、すぐ壁に行き着いた。
方向を変えてまた歩き出す。
また壁。
上を見上げるとカラッとした晴天。
精一杯手を伸ばしてみたが、届かない。
「ねぇ」
その青に吸い込まれそうで、頭がクラクラして、なんだか心細くなって彼女に声をかけた。
「ねぇってば」
彼女は眠そうな目をやっと開けると、うーんと伸びをした。
「ココどこだろ?」
僕は首を傾げる。
すると彼女は言った。
「知らないの? ダンボールっていうのよ」
「ダンボール?」
さらに首を傾げる僕に、彼女は大人びた様子で空を見上げる。
「そ。私たちは捨てられたの」
僕にはよくわからなかった。
彼女を真似て空を見上げる。四角く切り取られた青は額に入った絵画のよう。
そのとき、フッと視界が暗くなった。
「ママこの子猫うちで飼ってもいい?」
「仕方ないわねぇ一匹だけよ」
空が陰り君の姿が遠くなる。
僕は空がこんなにも大きいものなのだとはじめて知った。
君はダンボールの中涙も流さずに。
四角いセカイ 篠塚麒麟 @No_24
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