覚めない夢と孤独の薫
融解班の蔵鳴
花崎薫との出会い、そして死(プロローグ)
私とあの子は中学1年生の時に出会った。
中学から女子校に行こうなんて馬鹿な考えをしてた私を救ってくれた人だった。
入学初日、周りに女子しかいなくてオロオロしていた時に話しかけてくれたのが薫ちゃんだった。
最初は普通に身長も大きいし気だるげそうだけどかっこいい子だなぁ...なんて思っていたけれど、そんなことはなかった。
ガチャガチャが好きでよく回してて、
被りが出たら「お揃いだね」とか言って私にくれたり、二人で薫の家で薫が大好きだって言ってた牛乳寒天を作って美味しいねなんて言って笑ったり。時々遅刻したりして先生から怒られていたりしたけど、そんな日常が楽しかった。
…でもそんな日々は崩れ去ってしまった。
中学3年生の修学旅行の日。
あの日は今でも覚えている。
中学3年生になっても薫ちゃんと仲良くしていた私だったが、3年生になって別のクラスになってしまった。
離れ離れになるのが淋しくて[淋しいよぉ...]
なんて言ってたらよしよししてくれたんだよね。
とまぁそんなことは置いておいて、
その日いつものように薫が遅刻をしていた。
薫のいるクラス以外のバスは定刻通りに出発して
楽しい修学旅行に向けて思いを馳せていた。
……そんな時だった。
バス内で無線を聞いていた運転手から、
薫を乗せたクラスのバスと通信ができないと言われたのは。
私の学校は東名を経由して名神に乗り大阪まで行く予定だった。
だが、愛知県内でトンネルが崩落しバスが埋まった...なんて詳細を後で聞かされた。
バスは埋まり全員助からないだろうなんて言われていたけれども、一人だけ助かった人がいた。
それが薫だった。
私は薫が心配だったので薫のクラスメイトの葬式にも一緒に出たけど、そこで薫に投げかけられたのはひどい言葉ばかりだった。
【あなたも死んでしまえばよかったのに】
【なんであなただけ生き残ったの⁉】
【私の娘を返してよ!!】
とかなんとか。
ボロクソに言われすぎてこれ以上は覚えてない。
また別の葬式ではこんなことを言われた。
【あの子の分もあなたが生きて】
【私はいいから楽しんでる姿をあの子に見せて】
そんな事を言われたりもした。
このことがきっかけで塞ぎ込んでしまい、
薫は高校に行くことを辞めた。
……あれから半年ぐらいが経ち、私は高校に進学した。
薫はいつもどこかでブラブラしていて、私が学校終わりに電話をして近くにいると
一緒に遊んでくれるぐらいには気分が落ち着いたらしい。
話をしているとたまに
「誰かと私を殺してくれないかなぁ...」
とか言ってるけどまぁただの戯言だろう。
そんなことを思っていた。
……あの日薫がいなくなるまでは。
今年の1月5日、私はいつものように薫と遊ぼうと電話を掛けた。
だけど電話には誰も出なかった。
私は心配になって薫がいそうなところを探し回った。でも、誰もいなかった。
薫の両親にも電話をして聞いてみたが
【最近は見てないねぇ】
って言われた。
警察にも連絡したが
【どうせ家出でもしたんでしょ?事件性なんかあるわけ無いって】
って言われた。
だけども私は諦めなかった。
私は色んな情報を探し回り一つのポストに行き着いた。
《https://twitter.com/AltarCarnival/status/1746724576669880542》
このポストを見て私は驚愕した。そこに薫がいたからである。
驚きのあまり叫んでしまい教室にいたクラスメイトに不審がられてしまった。
まさか薫がデスゲームに参加していたなんて...
慌てて私はそのデスゲームに関して調べあげた。
守護者になれば薫が死ぬ事を止められるかもしれないと思った私はALTÆR CARNIVALが運営しているDiscordの鯖に加入した。
第一ゲーム、第二ゲームと薫は助かったが、
順位が低く守護者のみんなは次のゲームはやばいんじゃないか、なんて話を聞いて私は慌てた。
……そしてあの日。
第三ゲームのsection2で薫が敗北した。
私は全力で助けようと参加したが、
人が少なかった。
助けられなかった。脱落者が決定した瞬間、私は眼の前が暗くなった。
このまま意識を飛ばしてしまおうとも考えたが、
なにか話すかもしれない。なんて思って耐えた。
私はそこで衝撃の事実を知った。
薫は死にたかったのだ。修学旅行のあの日から。
死にたくてもクラスメイトの親から生きて欲しいと言われ、自殺もできず、かと言って殺されるなんて早々できるわけもなく。
そんな時に見つけたのがデスゲームだったのだ。
私は泣きながらその話を聞いていた。
……そして薫は処刑された。
覚めない夢と孤独の薫 融解班の蔵鳴 @kuranaki_alchemist
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。覚めない夢と孤独の薫の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます