私が宇宙花火師です

ねこ大名

私が宇宙花火師です

 よ、酔っ払っている宇宙花火師ことわたくしには三分以内にやらなければならないことがあったのですよ。あはは。順に説明しつつやって進ぜよう。


 まずは目標たる星、花火のキャンバスになる小惑星に向けての、二万尺ロケットの軌道修正および爆破設定。いわゆる「最終的な」やつね。それを素早く決める。まあ全部自動でやってくれるけどね俺っちのロケットAIはよう、それっ、ロックオン!と。

 続きましてはその小惑星の形状に即した爆発分布図の作成と、ロケット内の光彩エネルギーの最適化&シミュレーション。そして、それらのデータをこの花火を放映するキー局に送信すること(これがないとこの宇宙的花火のどこから撮影したらいい画が撮れるのか、連中にはわからんのですよ)。まあ全部自動でやってくれるけどね、俺っちのロケットAIはよう。ほれ、ポチッとな。

 最後に残ったのが一番大切、お祈りの時間ね。まあこれは自動でやってくれないけど、うーんとこれは極めて個人的なものだから…。


 それはそうと、相変わらず俺っちのロケット花火の軌道をずらそうと、旧石器時代な視聴者様からの嫌がらせ電波攻撃は続いている。暇な奴らやのう。でも俺にとっては一番得意とするシューティングゲームの一種。ガキの頃から慣れ親しんでる。イタい電波をひとつひとつ虱潰しに迎撃をしつつ、着々と事態は予定通り進行中。

 何せ俺にとって一世一代の大仕事だ。宇宙花火師の名誉のかけて、誰にも邪魔はさせない!ってな気合だけはある。


 おや、コクピット内の気化ドラッグの噴霧が止んだ。目的の星の重力圏内に入ったからだろう。永遠に引き伸ばされた酩酊時間の中、何度も走馬灯のように今までの人生の記憶が巡り、脳裏の浮かび上がって来た。

 かあちゃん、とうちゃん、さようなら。

 惑星爆破という花火の発破係を仰せつかった俺は、この巨大な花火の打ち上げイベント以下だったちっぽけな己の人生を蒸発させにこれから自ら突入する。

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私が宇宙花火師です ねこ大名 @bottleneckslider

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