天の龍は 世界を破壊しつくすだろう

晴れ。

天の龍は 世界を破壊しつくすだろう





紅黒衣の男には

三分以内にやらなければならないことがあった。





暗雲立ち込める空。

渦巻き蠢く天の龍ー雷を伴う激しい動き。


巨大なうねりは

徐々に地表に降りて来て。



山の頂からも程近い

この位置。


天の龍は迷うことなく

紅黒衣の男を目指している。






紅黒衣の男は悟ったのだ。

封印は破られた。







鋭い牙と爪が

時折

確認できる。


もう時間がない。

再封印に許された時間は三分。




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紅黒衣の男と天の龍の歴史は

人類の歴史に比例する。


紅黒衣の男は

ありとあらゆるモノを封じる。


封印の術師であり

術師の

始まりと終焉しゅうえんつかさどる者。



封印の術には

使命と誇りに満たし。

封印には

血と魂が注がれる。



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上空

眼前。




天の龍を封じた

紅黒衣の男の師の言葉。


『 人の欲は果てしない。

 天の龍を

 毒でけがし地に落とすほど 』



ひとときたりと

忘れる事はなく。



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師の封印は完全なものだ。


しかし・・・


あれから1200年。

ほころびもしょうじよう。



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天の龍はけがれに苦悶くもん

のたうち回る。

人の毒にまみ

狂気の闇にちている。


再び封じなければ

天の龍は

苦痛のままに

世界を破壊しつくすだろう。





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今はけがれをはらえない。





天の龍の吐息といき

大地を振わせる。


川が干上がる。


森が枯れる。


山が崩れ始める。


生命が消えていく。






紅黒衣の男は

天の龍を

見つめていた。






1200年前にも

禍々まがまがしく

よどみをまとう姿だった

天の龍。



封じていた長い年月にも

『人の欲』と称した毒は

天の龍を浸食していた。


毒に奪われた面影。


瘴気立ち昇り

崩れゆく外観。

異形の魔神となるか

天の龍。



正視に耐えない。







誰しも憧れた

美しかった天の龍は

ここにはいない。


誰よりも穏やかで

叡智の長と呼ばれた

天の龍。



優しかった天の龍。




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せめて殺さずに。


いつか穢れを払える術を

見出みいだすまで。



心を込めて。


想いを込めて。





天の龍よ

あなたを封じる。


















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天の龍は 世界を破壊しつくすだろう 晴れ。 @Nirvana852

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