萩市立地球防衛軍☆KAC2024その①【書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』編】
暗黒星雲
第1話 禍のルービックキューブ
正蔵には三分以内にやらなければならないことがあった。それは今、彼の手元にある〝ルービックキューブ〟を完成させることだ。
ルービックキューブとは1980年代に大ヒットした立体パズルである。作者も高校時代、友人に借りたキューブを授業中に挑戦している最中に教諭に発見され没収された経験がある。正六面体。それぞれの面が3×3の9マスに分割されており、各面は赤、青、白、緑、黄、オレンジの配色となっている。
一般人が独力で揃える事は難しく、多くの人は解法マニュアルに従ってパズルを完成させていた。慣れれば一分程度で済む。世界記録は四秒弱という凄まじいものだが、これはキューブを素早く扱う指さばきとマニュアルの丸暗記によるものだ。
さて正蔵である。彼は昨夜、ゼミの担当教授に呼ばれて外出した。出かけるときは「先生に呼ばれたから。すぐ帰るね」と椿に声をかけていた。昨夜は防衛軍の女性陣が「ひな祭りパジャマパーティー」をする予定であり、正蔵はそこに招待されていたのだが……正蔵が帰ってきたのは午前六時過ぎていた。
「正蔵さま。どうして戻って来て下さらなかったのですか? 椿は……椿は……正蔵さまのお帰りを一晩中待っていたのです。酷いです」
泣きはらした赤い目を擦りながら見た目が三歳児の椿が訴えていた。そして総司令のミサキは豊かな胸元をブルンと震わせながらぼそりと呟く。
「せっかくノーブラの胸を堪能させてあげようと思ってたのに残念ね」
その一言に思わずにやけてしまった正蔵だが、その呆けた顔を見た椿に脛を思い切り蹴飛ばされて、今度は真っ青になって悶絶していた。
防衛軍の女性陣……とは言ってもミサキ総司令と椿、地味娘の最上だけだったのだが……正蔵に罰ゲームをさせる事で意見が一致した。
お下げの地味娘、最上がとある立体パズルを取り出した。
「これはルービックキューブです。私、せっかく誕生日プレゼントで貰ったのに全然揃えられないんです。だから、正蔵さんに揃えてもらえたら……嬉しいかな」
色がバラバラになっているルービックキューブを受け取った正蔵はニヤリと笑った。そう、正蔵はこのキューブの解法マニュアルを暗記していた。一分以内は難しくても、二分以内で揃える自信があったのだ。
「あれ? 正蔵君、自信あるの?」
「まあまああります。任せてください。よろしければ解き方を教えてあげますよ」
「わあ。嬉しい。正蔵さんお願いしますね」
「ええ、俺でよろしければ」
ルービックキューブを手に持ってニヤニヤ笑いが止まらない正蔵。しかし、ミサキ総司令と椿は彼を思いっきり白い目で睨んでいた。
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