第2話 罰ゲームは永遠に
一行は防衛軍本部の食堂に陣取っていた。脇にはこじんまりとした厨房がある。今、狐耳のビアンカとイスカンダルの人のような金髪の長門が朝食の準備をしていた。ベーコンを焼く芳ばしい匂いがあたりに漂う。
「そうだな。単純にパズルを解くだけでは面白くない。三分以内という条件をつけよう」
ミサキ総司令が切り出した。正蔵は二分でキューブを揃える自信があったため、その条件を快諾したのだが……。
「三分以内にできなければ朝ごはんは抜きです」
「はあ、いいですよ」
正蔵には自信があった。三分なら楽勝だと。
「三分以内に揃えられなかった場合は、再挑戦する事を許可します」
「何度でも挑戦できるって事ですか?」
「ええ」
ニヤリ……と、妖艶な笑みを浮かべるミサキ総司令。正蔵はその真意を理解せぬままキューブに取り掛かった。
先ずは一面の色を揃える。正蔵はいつも白から取り組む。これはマニュアルが無くても直ぐに可能だ。そして、キューブの構造上揃えた面に接する部分の色も揃う。
次は四つの隅の色を合わせる。ここで暗記したマニュアルが役立つ。正蔵は四回動かすことで四つの隅の色をそろえることができた。ラッキーである。ここまで約40秒……後は簡単だ。
しかし、正蔵はキューブの色をそろえることはできなかった。
「2分50秒……51……52……」
最上がカウントダウンをしている。
「59……3分です……残念です」
そんなはずはない、何かがおかしいと、正蔵が小声でブツブツと呟いている。
「ちょっと貸しなさい」
ミサキ総司令が正蔵からキューブを取り上げ、そしてクルクルとそれを揃えてしまった。
「ほら、ちゃんとできた。どこもおかしくないわ」
正蔵はミサキ総司令から受け取ったキューブをまじまじと見つめる。どこも変なところはない。分解した形跡も色のシールを剥がした跡も無い。
「本当だ。変なところはないですね」
「でしょ。じゃあ正蔵君は続きね。できるまではご飯抜き」
「わかりました……」
必死にルービックキューブに取り組んでいる正蔵の脇に、ビアンカと長門が出来上がった朝食を並べ始めた。
「今日はベーコンエッグとほうれん草のポタージュ。トマトとレタスのサラダにデザートはプリンです」
「トーストかレーズンロールを選んでね」
料理の香りに鼻をくすぐられた正蔵の腹の虫がぐるると鳴った。
「正蔵君はキューブに集中する事。できるまで食べちゃダメよ。他のみんなはお食事にしましょう」
「いただきまーす」
ミサキ総司令、椿、最上、長門、ビアンカの五名がキャッキャウフフと朝食を取っているその脇で、正蔵は揃わないルービックキューブとの格闘を続けていた。
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