お笑いのネタ

もっちゃん(元貴)

ネタ合わせ

俺たちには、3分以内にやらなければならないことがあった。



「おーいみのる、ストップウォッチの準備できたか?いつも押すの忘れてるからな!」



「オッケー!信吉のぶよし、今回は大丈夫だ!バッチこい!」



みのるは、ストップウォッチのボタンに親指をつけて、俺に見せてくる。



俺たちは、お笑い芸人『メガネッコ』としてテレビで活躍している。



いつも、漫才は、5分ぐらいなのだが、今回出演する番組の都合で、3分でと言われ今、新しいネタの打ち合わせをしているのだ。



「じゃあ、初めるぞ!ボタンしっかり押せよ」



「わかっているよ、あっ!もしかしてフリだったりする?」



「んなわけあるか!真面目にやれ!」



「わ・わかったよ、信吉は怒ると怖いよなー、いつでもいいよ」



「はい、押して!」



——ポチッ!


         ◇


「「どうも〜メガネッコでーす!」」



「うーん、おかしいな‥」



「どうしたんだよ、さっきから首を傾げて?」



「いや、お前って頭良かったかなと思ってさ‥」



「何を言ってるん?俺は大学全オチの高卒だって知ってるやろ」



「そうだよな、こないだテレビでさ、アメリカの研究者がおかしいことを言っているんだよ」



「なにそれ?聞いたことないな、どういうこと?」



「それがさ、どういう特徴を持った人がIQが高いのかという研究結果がさ、全部お前のことを言ってるんだよ」



「はぁぁ!俺がIQ高いって!それならこんなところ立ってないわ!ホンマに俺のこと言ってる?その特徴教えてくれる?」



「その特徴は、男性で、メガネをかけていて、左利きで、アレルギーを複数持ってる人なんだよ」


稔が、指をおりながら特徴をひとつずつ確認している。



「ホンマや!それ、俺や!あれ?俺って頭よかったんだ!」



「いや、全員がIQが高いとは言ってないよ、ただその特徴を持った人が多いってこと」



「なんやそれ!一瞬、俺、頭良かったんや!と考えてしもうたやん!というか、それを言うたら、その特徴全部持ってる人、もう1人いるやん!」



「えっ!誰やの?それ!」 



信吉が、辺りを見渡す。



「お前しかおらんやろ!白々しらじらしいな!」



「てへ!バレた?」



「バレるも何も、俺とお前の仲やぞ!知ってるわ!お前の父親は、医者、母親が弁護士、妹が歯医者だからな、お前も頭がいいのもな、医者目指していたんやから!」



「あれ?それならなんで今ここにいるんだっけ?」



「それは、俺がこの道にお前を誘ったからや!なんでここでそんな話せなあかんのや!」



「もし、お前の誘いを受けなかったら俺は医者、お前は、公園のベンチに1人いただろうな」



「なんで、そんな寂しいやつにならないとアカンのや!芸人やってなかったら、普通にサラリーマンやってるわ!ピン芸人は考えられへんし、俺の相方は、お前しかおらんからな!」



「みなさん!聞きました?こいつ平気で恥ずかしいこと言ってくるんですわ〜」



「うっさいなー、ええやろ!ホンマのことや!」



「そういうところが‥‥」



センターマイクを両手で掴み、小さい声で




     【好きなんだけどさ】




「お前の方が恥ずかしいこと言うてるやん!もうええわ、いい加減にしろ!」


         ◇

——ピッ!

 


「何分だった、時間は?」



「あっ、すまん!間違えてストップの方のボタン押してたみたいや‥」



「はぁぁぁー!?」




          終










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お笑いのネタ もっちゃん(元貴) @moChaN315

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