第8話
俺と発育抜群女との攻防戦。
俺は、防戦一方だった。
このままじゃ、俺はやられてしまう……。
発育抜群女さんは、俺を挑発するように発育を揺らしながら言う。
「他のお客さんが容疑者から外れたとすれば、あなたが犯人だとほぼ決まったのうなもの。白状した方が罪も軽くなると思わない?」
……確かに。
この状況は、もはや詰んでいる。
せめて、早く謝ってしまうことで、どうにか丸く収めることを考える方が良いかもしれない。
発育抜群女さんは、そう言いながらも攻撃の手を緩めないようだった。
「まぁ、言い換えれば、あなたは容疑者の一人だから。あなたが犯人だと確定させるためにも、絶対に大人モードにさせるわ!」
可愛い顔に力が入る。
それもまた、可愛い……。
そして、必要以上に発育を揺らしてくる。
ここで言う『必要』とは、どういうことかと言うのは、説明も要らないだろう……。
俺の発育が大人モードになるリミット。
それを遥かに超える刺激を、俺に与えてくる。
「早く白状しないと、限界を越えちゃうわよ?」
もはや、これまでなのか……。
いっその事諦めて、このまま発育を堪能しておこうかとさえ思ってしまう。
発育さんの後ろにいた番台さんも、なんだか悪の組織の幹部的な雰囲気で腕を組み、悪そうな顔を浮かべている。
「覗きは、犯罪だからな! 私たちは、覗きを捕まえるために、仕方無く来てるだけ。……早くさっきの発育を見せなさい!」
番台さんも、意外とノリノリなんだよな……。
こうなれば、もう突き進むしかない。
……拝むだけ拝もう。
湯船の前で二人の女子が俺が出てくるのを待っている。
今までの言動からすると、こいつらは俺の発育を待ち望んでいるんだよ……。
機が熟した俺の発育を……。
そうか。
それであれば、この挑発に乗ってくるのではないか?
俺は、土壇場で思いついた作戦を実行する。
生まれてから今まで、したことが無いくらい、最大限に真面目な顔で言う。
「発育抜群女さんと番台さん。もしも、俺が犯人だとして。つまり発育抜群男だとした場合、そのくらいの刺激じゃ足りないのではないか?」
自分でも何を言ってるのか分からないのだが。
悪の女王様と、その側近のような二人には、この口調が丁度いいだろう。
発育抜群女さんは、少し狼狽えた。
「……なに? 私の刺激じゃ足りないということ?」
「……そうだ。そんなものじゃ足りないだろう。もしも女湯を覗いていた場合、何人の女性の裸を見たと思っているんだ?」
発育抜群女さんは、ハッとした顔をした。
そした、生唾を飲み込みながら、俺の話を黙って聞いている。
「色んなパターンの女性の裸によって大人モードへ発育した発育。それを拝みたいのなら、一人では足りないだろう?」
……こんなこと言って、本当に乗ってくるのか。
……自分で言ってて、論理がおかしい気もするが。
「……確かにその通りかもしれない」
……うん。いとも簡単にも乗ってきた。
発育抜群女さんは、どうしたらいいだろうと少しパニック気味にキョロキョロしている。
もう少し押してみよう。
「今まで外へ逃がした人達も、実は容疑者から外すのは、軽率というものではないか? なぜなら刺激が足りていなかったから、十分に発育しきって無い状態だったんだ!!」
俺の会心の一撃とも呼べる、屁理屈論理。
大人モードって、そんな仕組みなのかなと、一瞬でも思わせたら、俺の勝ちだ。
俺の攻撃。
どうか、効いてくれ……。
「……そ、そういうことだったの。犯人を追い詰めていたと思ったのに」
思いのほか、俺の攻撃は発育抜群女さんに効いているようだった。
そして、番台さんにも少し効いてるようで、悩ましい顔をしていた。
番台さんが口を開く。
「……もし、それが本当だとしたら、不味いか。ちょっと、待っておけ」
番台さんは、浴室の外へと出ていってしまった。
その場に残された俺と発育抜群女さんは、二人で見つめ合う。
「あなたが犯人じゃない可能性がでてきたわね」
「あぁ、そうだ」
眺めてる俺は良いのだが、発育抜群女さんは、なんだか寒そうにガタガタと身体が揺れだした。
ずっと湯船にも入れず、濡れた状態で縛られたんだもんな……。
俺は、発育さんへ提案した。
「……暫し、休戦としないか? とても寒そうだから、湯に入ってはどうだろう?」
発育さんは、少し躊躇いながらも、素直に受け入れてくれた。
「まだ、あなたは敵だけれども。情けはありがたい。ありがとうございます」
そう言って、すぐに湯へと入ってきた。
「あぁーー……。温かいーー……」
この子、すごく素直な性格だな。
そして、やっぱり可愛いな……。
二人でゆっくりと湯に浸かる。
……けど、なんだか距離が近いぞ。
大浴場なのに、なんでこんなにも俺の方に寄ってくるんだ?
もう少し離れても良いのに。
「休戦といえど、まだあなたは一番有力な容疑者ですからね! 発育を見せてもらうまで逃がしませんよ?」
……まぁ、そうなるか。
二人で湯に浸かって番台さんが帰ってくるのを待つ。
気を紛らわすために、雑談でもしておくか。
「「あの……」」
二人で同じことを考えていたのか、声が揃ってしまった。
「あはは、被っちゃいましたね。あなたからどうぞ?」
「いやいや、俺はただ雑談でもしようかなって思っただけで」
発育抜群女さんは、こんな状況だと言うのに、笑っていた。
「私もですよ。なんだか、沈黙って耐えられないと言いますか」
「わかるわかる。俺もだよ」
そう言うと、発育さんの顔がパッと明るくなった。
「すごい、この気持ち分かってくれる男の人って今までいなかったんですよ。なんだか気が合いそうですね!」
発育さんは、天然なのだろうか。
少し抜けてる所があるのか。
普通に会話をしている。
「今までの彼氏とかが、そうだったってこと?」
「いえいえいえ。彼氏なんていたことないですよ。いつも私が喋り過ぎてしまうのか、人が離れていくんですよね」
「そうなんだ。それは、周りの人は勿体ないことをしてる。こんなに楽しくおしゃべりできるのにね?」
暫しの休戦。
俺と発育さんは、和やかに銭湯を楽しんだ。
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