終章 私は、実はあまり売れたくないのではないか
ここまで色々と毒を吐いてきて、私の心にも安堵というものが浮かんできました。
やはり毒を吐く行為というのはセラピイの一種になり得るようでございます。
ここまで書いてきてこれを言うのも何なのですが、もしかしたら私は売れたくないのではないかという気になってきました。
そもそもなぜ私はここまで個人出版にこだわるのでしょう?
いや、自分の作品を書いてお金を取れるなら、それは文芸書を通じてでなくてもよいというこだわりの無さから来ているだけなのかもしれません。
ただ不思議と私は書く事をやめる事が出来ません。
それは時々素敵なものにも映るし、救いがたい病理のようにも見えます。
個人出版の世界には相変わらず承認願望に飢えたオッサン連中の黒い欲望が渦巻いております。私もその一部かもしれません。
ですが、時々誰かが「あなたの作品は面白かった」と一言くれると、それは私がこの世に生を受けた理由に少しばかりの彩りを添えてくれるような気がするのです。
このよく分からない病理と言いますか、妄執が癒えれば私ももう少し楽になれるのかもしれません。
ですが、不幸にも指は売れない文章を叩き続けます。まるで、望まれていないのに差し出されるコーヒーのように。
もはやこの小銭稼ぎは意味の分からぬ意地だけでやっているような気がしてなりません。
それでもたまに作品が読まれたりすると、そこには私の撒いた種がかすかに芽吹いているような気になれるのです。
このエッセイと言いますか、文句の垂れ流しのような連載は終わります。
ですが、あと数年経っても私はまだ似たような事をやっている気がするのです。
売れずに、期待もされずにただ自分の書きたいものだけを書いている。
それもまた一つの幸せなのかもしれません。
嗚呼、どこかからお金が降って来ないでしょうか。
そうすれば、もう少し読者の望むような作品を書くだけのゆとりが出来る気がするのですが。
裏街道を歩き、人知れず死んでいく。
それもまた、私が望んだピリオドの一つなのかもしれません。
【了】
電子書籍の売り方がまったく分かりません~個人作家のやらかしサバイバル~ 月狂 四郎 @lunaticshiro
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