【KAC20241/20241+】デジタルストームトルーパー 蒼龍

下東 良雄

First Digital Crisis

 蒼龍チンロンには三分以内にやらなければならないことがあった。

 日本のAI『SAKURA』を守るために、新種のウイルス『BUFFALO』をネットワーク上から駆除することだ。


 AIが国や地域によって管理され、様々な分野で活用されるようになった近未来。突然、主要なAIのデータベースとそのバックアップ、思考エンジンまでが破壊され、世界中が大混乱に陥った。

 そんな中、反AI団体『HUMANITY』が『BUFFALO』を感染させたと犯行声明を発信。AIを駆逐するための闘争開始を宣言し、日本のAI『SAKURA』も破壊することを予告した。


 日本政府は、世界で唯一「デジタルストームDigital Stormtrooperトルーパー」の称号を持った凄腕のホワイトクラッカー・蒼龍チンロンに最後の望みを託したのだ。


 現在、蒼龍チンロン独自の攻性ファイアウォール『OROCHI』と防性ファイアウォール『IWATO』を展開。『BUFFALO』のサーバーへの感染を阻んでいた。


 十代の少年に見える蒼龍チンロン

 黒髪のセンターパートで、ごく普通の高校生のように見える。


 『SAKURA』の管理センターで関係者たちが見守る中、ディスプレイとキーボードの前に座り、一言呟いた。


「いくぜ」


 『IWATO』が開かれ、一部ポートを解放。そこへ一気に流れ込んでくる無数の『BUFFALO』がデータを次々に破壊していく。

 その様子を横目に、深いディレクトリへ潜っていく蒼龍チンロン


「あった……」


 蒼龍チンロンの目の前には、一枚の画像ファイルがあった。


「本体発見……はるか昔に流行った『偽装FAKEファイル』か……検出できないわけだ……」


 ファイルを解析し、作成した『BUFFALO』のワクチンプログラムを実行。『BUFFALO』は沈黙。その間、たった73秒だった。


「職員の身元調査をした方がいいですよ」


 『BUFFALO』は、人の手で感染させられていたのだ。

 管理センターを立ち去る蒼龍チンロン


 これが蒼龍チンロンと『HUMANITY』との長きに渡る戦いの始まりだった。



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