全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあった

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

第1話

 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあった。

 走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走走…………

 地響きを従えて走る。

 地面を蹴り、草木を踏み潰し、猛り懸命に突き動かされるように走る。


 ライオンの群れが向こうに見えてきた。


 腹ペコの飢えたライオンは恐ろしい。どれだけ逃げようとしても食らいつかれて爪を立てられればもうどうしようもない。

 駆けてくる獲物の群れを見つけた奴らは食事が向こうからやってきたと大喜び。

 群れに轢き殺される?

 角で突き殺される?

 踏み潰されて地面になる?

 構うものか。飢えて死ぬよりもお腹いっぱい食べて、はち切れそうな腹で動けなくなって死にたい。

 血に飢えた獣と狂走する獣が今まさに正面衝突……いや違う。

 衝突寸前、一番乗りのライオンが飛び掛かった瞬間、バッファローの群れが動く。

 群れの右側は身体を右に倒し、左側は左に倒し、群れの中央は右へ左へと飛んでいった。

 アメフト漫画の俊足のメカクレもかくやの足捌き。バッファローの群れは二つに割れてライオンの群れを素通りしていった。

 ギリギリまで引き付けてのフェイント。飛び掛かったライオンの群れは文字通り出鼻を挫かれ、地面に激突するだけ激突して、ご馳走の群れが小さくなって行く様を見ることしかできなかった。




 血眼になって走る。

 密漁者達の車がスクラップにされた。

 「俺の新車ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

 あれはもう修理じゃなくスクラップ行きだ。

 悪どい金持ちが作った箱モノに足跡と共に穴が開いて風通しが良くなった。ついでにボサッと突っ立っていた趣味の悪い銅像は踏み潰され、裏帳簿が風に舞って飛んでいく。

 「ワシの金ぇ!」

 市民にリンチされるのは目に見える。

 それでもバッファローは止まらない。ズンズンドンドン猛烈に熾烈に激烈に真っ直ぐ走っていく。

 そうしてバッファロー達の行く先に現れたのは真っ白い建物。

 これも踏み砕く……かと思いきや、急停止。

 群れが一斉に建物の前で大合唱。これを聞いて建物の中から出てきた白衣の医者は、バッファロー達の群れの中、一頭の背中にせられた顔色悪い子どもの姿を確認した。

 おっかなびっくりその子を抱え、白い建物…病院へと入っていった。

 医者が診て、『あと少し遅ければ助からなかった。』と断言し、3分で行われたバッファロー達の凶行は無罪放免。

 車検に来た密漁者と金を集めていた悪どい金持ちが代わりに有罪懲役となり、助けられた少女はバッファロー主人公のヒーロー小説を書いて、その利益を彼らの保護活動の支援に使っている。

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全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあった 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

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