Gratuitous Violenceを忘れない
君足巳足@kimiterary
■■■■■
おれは
拳が握られている/腕が振られている/足が踏み込まれている――
目線は外れている。音がしている。しているのだった。手に熱を感じる。腕、肘、連なった痛みを感じる感じるのだった。だから『何か』に命中しているはずだ。が、こういうのは全部
◆
殺意と集中力は同じものだよと先生が言ったことをおれは忘れていない。
◆
「いけるな?」と、そう傍らから声をかけられて初めて今のおれは何なのか、今ここがどこなのかをようやく思い出す。おれはリングの上にいる。総合格闘技の。ただしアンオフィシャルな、それの。試合開始からは三ラウンドが過ぎている。認めよう。若干不利だ。認めよう。おれは初戦で、相手にはキャリアがある。認めよう。自分は勢いだけの
「冷静になれ」と聞こえる。大丈夫。
ゴングが鳴る。
身は起きるというより弾ける。頭の中には思い出していた
前に出る。
踏み込む。
体を捻る。
拳を放つ。
繰り返す。
押して、時に引く。押せる時に、押す。
勢いを殺さずそれ以外のすべてを殺す。
そうした。
そうしろと教えてくれたのは先生じゃなかった。
やがて、相手が動かなくなったので、おれはその場を去った。
それだけは、
◆
先生へ。
覚えてるよ、おれが学校を辞めた日、集中力をもって臨むことは何事にも役に立つって言ってたこと。
そしておれを抱きしめて、これはお前にしか言わないが、お前にだから言うが、って、そう、こっそりと、教えてくれた。殺意と集中力は同じものだよ。
笑ってたな。
会ってないけど、あんた、まだ生きてるのか?
死んでないか――殺されてないか?
もしかしたら――
そうだったらいいなって、思うよ。おれは。
Gratuitous Violenceを忘れない 君足巳足@kimiterary @kimiterary
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