僕に触らないで

義為

本文


「実は僕、人間じゃないんだ」

 君は突然、言った。なんでもない、夕陽に照らされた帰り道の下り坂。

 私となんとなく馬が合う?趣味は合わないんだけどね。そんな君。

「そうなの?」

「僕は人間じゃない。仲良くしちゃいけないんだ」

「そんなこと言わないでよ〜。トモダチ、でしょ?」

 いつものように、肘でつつこうとする、と。

「僕に触らないで!」

 初めて聞いた、そんな声。

「……ごめん、サヨナラって言いたかったんだ」

 いつもの言葉。でも、意味は違うって分かる。

「それって、また、会える?」

 聞きたくない。でも訊くしかない。

「いつか、また」

 嘘。でも、引き止めても無駄だよね。

「さよなら!」

 でも、また、会えるよね。


 ◇


「実は僕、人間じゃないんだ」

「そうなの?」

 こんな時に素直な君。いつもなら、冗談で返してくれるのに。

「僕は人間じゃない。仲良くしちゃいけないんだ」

「そんなこと言わないでよ〜。トモダチ、でしょ?」

 そうだ。そうだけど。

「僕に触らないで!」

 トモダチなら、こんなことしないでよ。

「……ごめん、サヨナラって言いたかったんだ」

「それって、また、会える?」

「いつか、また」

 嘘だ。もう会うことはないよ。

「さよなら!」

 この日を、忘れない。

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僕に触らないで 義為 @ghithewriter

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