第2話 おひとり様交流会

しこたま飲みすぎて昼になってしまった。

記憶にはないが宿にはちゃんと戻っていたようだ。

パーティー解散は実は二度目だ。以前はメンバーの中の女性をめぐってメンバー同士でまさに血みどろの争いに発展して解散した。色恋とはやっかいなもんだな。

メリッサとリーダーは円満に脱退したからいいものの血の気の多い冒険者は平和とは無縁なものだ。

まあいろいろなやんでも仕方がないし、解散したときの清算金は借金返済に消えてしまって貯金もないから明日の飯にも困るくらいだから冒険者ギルドにいくとする。

「こんにちはアビさん。今日はおひとりですか?」

彼女は顔見知りのギルド職員だ。受付に立っていることが多い。

「聞いてくれよエリーン。実は解散しちゃってさ。貯金もないしなんかお勧め案件ない?」

なるべく深刻にならないように努めて明るく話しかける。

「ちょうどよかった!掲示板にアビさんにピッタリなイベントがありますよ!おひとり様交流会に参加してみただろうでしょう?冒険者ギルドの福利厚生の一つでギルド会員は参加費無料ですよ。困ってる冒険者支援の一つで市民交流としても結構人気なんですよ」

なにやら聞いたことないイベントだけど無料なのはありがたい。

夕刻に食事メインの子の町を拠点にしている様々な職業との交流会があって夜からは酒と出会いが中心の交流会となるらしい。先行きが不安な中で色恋沙汰に飛び込むわけにはいかないから食事だけ参加するとしよう。

「う~ん。どんなんかいっちょ行ってみるかぁ。タダで飲食できるだけでもありがたい!」

「いい交流会になるといいですね」

「ああ!いつも親切にしてくれてありがと!またくるよ!」

エリーンに分かれを告げ夕刻までにこなせそうな配達の依頼を引き受けてギルドをあとにする。


夕刻になり会場となる酒場の適当な席につく。

周りには駆け出し冒険者のような見た目のものや金持ちの商人風な見た目のものやベテラン冒険者風なものや場違いなくらい着飾った女もいる。

おひとりさま交流会というだけあっていろんな職業の者が集まっているようだ。

私の席には金髪の綺麗な女と、黒一色の衣装を着た女とおっとりした見た目の女がいる。

「まずは自己紹介から始めましょうか。私はテルファ。気楽な冒険者で斥候よ。趣味で娼婦もやってるわ。娼館通りの「宵の抱擁」で楽しいひとときを過ごしましょう。男女種族問わずお相手するわよ。」

と、金髪の女がいう。ペンタクロスでも南の方は奔放なやつらが集まってるからここ南西のククリカも例外ではなく性別や種族にこだわらないやつらがおおい。

「あら、媚薬いる?私はマデリン。ヒトにはあまりおおっぴらに言えないくすり屋さんかな♡媚薬とか自白剤とかしびれ薬もよく作るよ。最近は減ってきてるけど掃除やさんも兼任してるよ。この子は相棒よ」

黒づくめの女がいう。これ絶対闇の仕事の人だ。薬屋さんっていってるけど掃除もするくすり屋さんってあっち系の人だな。

「私はアビ。見ての通り冒険者だ。剣が得意だよ。」

「私はデイナリス=マルケスといいます。今は家出中の無職です。もともとは商会で商品開発や研究をしていました。収納魔法もってるしサポートが得意だから冒険者ギルドに登録したばかりなのです。」

おっとりした女はサポーターとして登録したらしい。

「おかわりどうぞ~」

給仕が飲み物の追加を運んできた。これで無料とはほんとにいたれりつくせりで本当にたすかる。定期的にやってるってエリーンは言っていたけど今まで知らなかったのが悔しいくらいだ。


「今日はおひとり様交流会だし皆さんおひとりだとは思うのですが普段一人が好きな理由ってあります?」

おっとりデイナリスが言った。

「すべて自分の腕しだいだから一人のが気楽ではあるよね。色恋のもめごととか面倒だし。」

冒険者をしているテルファがいう。たしかにこれだけ美人だと色恋もめんどくさそうだ。

「わかる~。嫉妬も面倒!同僚からの足の引っ張り合いとかね。一人のが楽だよ。どこかに所属するより外注で引き受けて仕事こなすだけが一番いい!」

くすり屋さんのマデリンがいう。

「結婚しろとか年齢であーだこーだ男や女や本当どうでもいい!男はよく女はダメとか私だって好きなことやりたい!」おっとり女のデイナリスがなにやらプリプリしている。きっと商家でいろいろあったから家出したのだろう。

「私はパーティーが解散してね。ソロはあんまりしたことないけど一人はちょっとさみしい」

なにやら琴線に触れたようで金髪美女のテルファが頭をなでてくる。

そんな話をしてるうちに夕刻の交流会は終了の時間となる。

「あんたたちとは気が合いそうだし気楽な臨時パーティーならいつでも歓迎よ!暗殺者ギルドか冒険者ギルドで指名依頼して!ぜひまた会おう!」

マデリンが席を立ちながらみんなと握手をする。

「やっぱりくすりってそっち系だったんですね」

デイナリスもおっとりしててもそっち系ってことには気が付いていたようだ。

「あーたのしかった!そろそろ宿探すか~」

そういって帰ろうとするとテルファが腕をムギュっと組んでくる。

「アビちゃんは私のとこにおいで!気楽なソロどうししばらく臨時パーティー組みましょうよ!昔から捨て猫とか拾っちゃうタイプなんだよね~。」

「私は猫じゃないよ~!」

そういいつつお言葉に甘えることにする。背に腹は代えられない。

「さすが冒険者同士、すっかり仲良しですね。私も帰ります。」

デイナリスがにっこり微笑んでそれぞれの帰途につく。

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